番外編

□イズミサワケイタの傷
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朝。
すっかり朝練も始まっている時間。
ノロノロと重い腰を起こす。

オレの毎日は、一つ下のオトコ二人にヤラれまくる毎日。
イヤ、毎日シたがるのはアイツ、カネダだけだった。
オレのケツをサイコウだと言って掘る。
場所はどこにだってある。校庭でだってヤる。
ほんの少し体が隠せれば何処でだってヤられる。
本気の頭のイカレタ奴。
いつか、吊るしてやる。

階下からはいつもの朝の一場面が繰り広げられている。

「ケイ、まだ居たの?」

ダイニングテーブルには、仲の良さそうな三人親子
が朝食を囲んでいる。
オレの存在がそんなに驚くような事なのか、母親は唖然とした顔でオレを見つめた。
一つ下の弟は、オレを見るとうんざりした顔で牛乳に手を伸ばす。
「寝ボウ」
「ダメじゃない!朝練ちゃんと行かないと!何のために、あんな私立に行かせてると思うの?」

あんな私立。
はいはい。
どうせ、オレは球蹴りしか能が無いガキだよ。

「コウちゃんみたいに、推薦もいらないでいい大学に入れそうな頭がアンタにもあれば、こんな事、言わないわよ?でも、アンタはそうじゃないでしょ?
頑張ってサッカーの推薦とって大学行かないと、皆から取り残されちゃうのよ?ウチにはフリーターとか、プーなんて人いらないんだから。しっかりやって頂戴」
最後は顔も見たくないって感じに、フイとテレビへ視線を変えた。
父さんは何も聞こえないみたいにさっさと飯を食って、席を立つ。

うんざり。
コウキ、オマエもそう思ってるだろうけどな、オレの方がその何倍もこの家にうんざりしてるんだよ。

一歩家の外へ出ると開放された空気が余計に自分を惨めにさせた。
何処にもココロの置き場が無い。
オレにあるのは何処にでも行けばいい、自由。
”あんな私立”に通わせてもらってる自由。
あの家に、オレは「いらないヒト」。
盛大に溜息が零れる。
朝練に出れないなら、もう学校に行く気も失せてくる。
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