本編2

□夏の裏側
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ついにオレはここへ立つ。

夏真っ盛りの上稜高校。

その門を潜る。




チヅカナツト。
オレの季節が来た。
なら。
今ならなんでも出来そうだった。
今なら、彼に会える。
会いたい。

また彼の顔を見たい。
彼の。

そう。
モリヤ ナギの顔を。







来年は受験だ。
今のオレはいくつかの私立高校から誘いを受けていた。
クラスのヤツらは、ヒーヒー言って勉強してる中、オレは一抜け。
中3の夏休みを満喫してるってワケだ。



ホンライならな。


7月のトレセンでオレはセンセーショナルなショックを受けた。
しかも、恋とか愛とか、んなもん、すっ飛ばして、ただただ、オスの本能丸出しの、セックスがしたいっていう感情モロ出しの欲情。

それを抑える術を知らないオレは、あのモリヤ ナギの顔を脳裏に焼き付けて、目を閉じて、右手をひたすらに動かした。

こんな想像だけで。
毎日毎日。
よくもオナれるもんだと自分で感心する。

夏休みになって、ガッコとかそんなシガラミから解放されて、オレなんか勉強する必要も無いから、もっとオレの頭ん中はモリヤナギ一色。
このままじゃ、チンポが擦り切れるかも知れない。

そんなキキカンを感じて。
そう、結局はなんでもいいんだけど理由なんてさ。
とにかくもう、会いたくて会いたくて会いたくてここまで来ちまった。

会ってどうするか?
んなもん、そん時考えればいい。
もうとにかく、あの顔がホントにあるって確信できて、それで自分の目で生に見れればとりあえずそれでいい。
とにかく。
アレが夢なんかじゃなくて、本当に存在してたって
現実味が欲しい。
だって、毎日妄想で抜いてんだぜ?
そりゃ記憶も薄れてくるっつーの。
薄明かりで見た。
ミダラなモリヤ ナギの顔。
ワタヌキタツトを咥えて苦しげに目を細めたあの顔。
はっきり言って、オレはホモじゃねえ。
ホモじゃねえけど。
あの顔はキた。マジキた。
で、それが好きとかどうか全然自信ない。
でも、あの顔をオレは毎日ズリネタにしてんだよな。
それってどうなんだ?
エロ本の写真なんて、マジどこの誰だって構わない。
だけど、イク瞬間の顔くらいは選びたいから、ペラペラページ捲りまくって、一番イイって思う顔のとこで、オレは発射させる。
それが。
始めから終わりまで、オレはモリヤ ナギのフェラし
てる顔思い出してイケる。
で、これが恋かって恋だろって言われると結構悲しい。
だってさ。
恋って、もっとキレイなもんじゃん?
なんか苦しくなってさ。ま、今確かにオレも苦しいけど。
なんつーか、こう毎日が楽しくて好きが募ってくって
いうか・・・。
そんなんじゃねえのかな?そりゃまともに好きとかんなって付き合ったコトとか無いから想像の域を出ねえけど。
そんなアコガレみたいのがあるんだよ。
恋って。
とにかく。
アレは、オレが生で他人のセックスを見たからこんだけ萌えてるワケで、オレはホモじゃないし、モリヤ ナギに恋してるワケでもない。
けど。
そう。これはオレが面白いから、からかい半分で、モリヤ ナギに会いに行く。
それだけだ。


そう自分に納得させ。
夏休みだってのに、クリーニングから戻って来たばっかの制服を着て、親にもテキトー言って、電車で一時間ばっかかけてここまで来たのだ。

少しドキドキする胸が痛い。
もうすぐだ。
もうすぐ会える。
あの人がここにいるんだ。

真夏のギラギラした日差しが校舎まで続く並木の新緑の間からチラチラとオレを刺す。
校舎の手前にある体育館の影に入ると、僅かな風でも涼しく感じられた。
「あっちー」
ただ歩いてるだけで汗が出た。
並木に取り付いた蝉の泣き声が、死ぬ程の暑さを強調する。
と、その蝉の鳴き声に被ってネコの声が聞こえた。
ナァ〜オって。
そのドラ猫っぽい鳴き声に気が引かれる。
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