本編2

□5万打記念リク・ワタヌキxナギ
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組み敷かれる恐怖に体が強張った。
獰猛な視線がオレの顔上から注がれる。
その目を合わせて思う。

・・コワイ・・・。

何度経験しても、オレはこの男を埋め込まれる恐怖に勝てないでいた。



モリヤ ナギ。センパイと喧嘩中。


「・・・っ」
センパイの唇がオレの耳に齧りついた。
嬲るような動き。
決して、オレを気持ち良くさせるとかそんな動きじゃない。
ワタヌキの顔は。
この機会を丁度イイって笑って。
オレをイタブッテ、思う様、オレの体を喰い付くしてやろうって顔だった。

今更だ・・!
今更謝ったって、もう遅い・・!
っていうか、オレだって別に謝りたくなんかないっだけど、こんな至近距離で。
お前を喰ってやるって顔されたら、オレだって意地とかなんとか言ってるヒマなんかない。
怖気が勝つ。

「センパイ・・ッ」
「泣いても」
センパイの口がオレの耳元で動いた。
「ゼッテェやめねぇ」
その瞬間にオレは耳から犯された。
ワタヌキの舌がオレの耳の淵をべっとりなぞって、その小さな窪みも嘗め尽くし、脳みそまで響くよう
な熱い吐息を、そこで吐いた。
顔が熱い。
オレの肺は、もう通常の働きを成してなかった。
息を吸っても吸っても、苦しさは解消されなかった。
逆に、意識すればするほど、呼吸の仕方がギコチナくなっていく。
「や・・だ」
ワタヌキの左手に両腕を頭上で纏められて、唇と唇が溢れた唾液で濡れて、それだけでもう興奮はマックス。
オレは滅茶苦茶、腹立ってたのに、どうしても、熱を抑える事が出来ない。
体の熱。
自分の怒りより、彼の怒りより、今は、熱にカラダを支配されていた。
「ナギ」
この声に。
この掠れて、欲情したオトコに名前を呼ばれて、求められて、フツウでいれるワケがなかった。
「あ・・・ッセンパイぃ」
ワタヌキの手が遠慮無しに、オレのカラダの内側に向う。




そもそも、喧嘩中のオレ達がなぜこんな熱くカラダを擦り合わせているのか。
話はこの数分前に戻る。


夏合宿中の体育館。
真昼間は誰も居ないここで、オレは、センパイに付き合って、一学期中と合宿中の総スコアの成績をまとめていた。
これは、ジャンケンで負けたセンパイがオレをムリヤリ拉致。
で、他の部員はどこ行ったかって、ねえ。
夏ですよ。
夏の一時四時。
サイアクの暑さ。
この時間は練習するだけムダ。
そんな訳で、夕方の練習時間までを、本日は有意義にプールで過ごすという、オイシイ予定だった。
が。
「・・・・負けんなよ・・」
淡々と走るワタヌキのシャーペン。
「っるせえな・・」
「シンジランネエ・・・なんで100人近くいんのに、全部負けるかな・・・」
「・・・・・手動かせよ」
ノートの上、オレのペンは試合放棄。
「いいなぁ・・・プール・・」
顔を上げたオレをチラリと見てセンパイが言った。
「どうせ」
ワタヌキのノートがまた1ページ捲られた。シャーペンは滑るようにスラスラと数字を書いていく。
「お前は入れねえだろ」
「なんで!?」
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