本編

□味方?
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いつの間にか、サッカー部の間で、
”あの王様が、謝った相手”
という、なんか微妙に怖がられる地位にオレはいた。

一瞬、変なウワサが立ってるって聞いて、ビクついたオレは大きく溜息した。
なんだよ!そんな事かよ。
オレはまた、オレ達がデキてるってバレたのかと思ったぜ?
だって、アイツたまに部活中に傍に寄ってきて話かけて来たり、自分が飲んだ後のポカリ(部活共用給水ボトル)バスしてきたりするから、少しヒヤヒヤしてた。
しかも今日なんか堂々と一緒に帰ろうとか言うし。
人前だと、なんかやたら照れるんだよな・・。

「って、知ってたのかよ」
オレ達はすっかり暮れた空を背にしてチャリを走らせていた。
「ああ、秋田が前に吹いてたからな。そのせいだろ」
「秋田・・・さんて、あの時話しかけてきた?」
「ああ。なんて言ってたかな・・・遠い親戚同志とかなんとか、しかもヤーさんが血縁に掠ってるとか」
「は?知らねー!何デスカ、ソレ」
「あんまり聞かれるから吹いたらしい。アイツ面倒になると、
オレをヤーさんにすんだよ。そうすっと皆、引くだろ」
「たいしたヒトだな〜。超テキトー」
信号待ちでチャリを止めると、後ろからワタヌキが指を差した。
「あ、待て、アッチだ。今日はウチだろ」
「あ、アッチねって、オレ道知らねーもん。そろそろアンタ漕いだら?」
「自分で漕いだ方が覚えんだろ」
そう言ってワタヌキは相変わらずオレの肩に肘を乗せている。
今日はワタヌキの家に初めて行く。
って、ついさっき決まった。
しかも泊まりだ。
でも、別に何も構える必要はなかった。
ワタヌキはあの無理な挿入以来、オレに挿れようとしない。
ここんとこのオレ達は、ひたすらに、抱き合ってキスして、気持ちよくなる。それだけ。
「・・兄弟とかいる?」
「いねぇな。親は遅いから顔合わせんのは朝かもな」
「フーン・・」
「あ、アレ。あのグレーのマンション」

割りとこじんまりとしたマンションだった。
下町には似合い風の低階層。
ワタヌキの家は一階だった。エントランスを抜けて、その突き当たりのドアを開けると芝の中庭が開けていた。
それも横切って、ワタヌキは曇りガラスの嵌ったドアを目指した。
「入れよ」
玄関に入って、螺旋階段が眼に入る。
ここ、マンションだったよな・・?何で部屋の中に階段があるんだ?
ワタヌキはさっさと、その階段を昇り始めた。
「二階あんの?」
「ああ、そう。ウチだけだけどな」
「スゲー、・・親、金持ち?」
さぁ?このマンション建てたのはウチらしいから、いいように作ったんじゃねーの」

「・・・マジで、ボンボンかよ・・」
呟くオレにワタヌキが振り向く。
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