本編

□キタムラ・・・!
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野球の試合は、雨で中止になったりするけど、サッカーは雨でも雪でも試合続行。
爆破予告でもなけりゃ、中断なんて有り得ない。
少しの雨だったら聞くなボケ!くらいの勢いで、やる。
さすがに、部活の練習は雨が降れば室内に切り替わるけど。

そんな雨の日だった。
オレは決断を迫られていた。
一通の封筒。古典的な告白。返事は昼休みに、音楽室で。
顔も知らない女だったから、北村に友達づてで、こっそりと教えてもらう。
林田愛香。愛が香る名前。
美人だった。
清楚な雰囲気を持ったお嬢さんって感じ。

「スゲー、ラッキーだな、モリヤ〜〜〜ッ」
北村が自分が告られたみたいに、小躍りして喜ぶ。
「お前のその冷たい顔のどこに惚れれるのかはナゾだが」
「えっオレって、んな冷たい顔してるか?」
思わず、顔を触ってしまう。
「あ、無意識なんだ?よく眉間にシワ入ってるから、なんかムカついてんのかな〜?と、人々に、思われておるぞ。恐そ
う〜って、女子なんか。お前、見た目端正なだけに怒ると迫力だから」
知らなかった・・。眉間をさすりながら改心。
「気を、つけよお。」
「おう、がんばれ。もちっと愛想が備われば、我らがワタヌキ先輩も、お前を蹴ったり、小突いたりしなくなんだろ」
!!、だから、蹴られたのか!?
「・・なるほど。ところで音楽室ってどこよ」
「あっちの校舎の二階か三階だった」
北村は理科棟を指差す。
昼休みまでのタイムリミットは後、2時間。
だが、オレのタイムリミットは別の問題でカウントされている。
ワタヌキ。
アイツにこの事を言うべきか否か。
なんとなく、わかってるんだけどアイツがオレに対してとか。
でも、ハッキリ言われたわけでも無い。
そもそもオレ達の関係って何括りになるわけだ?
キスして抱き合って、カキっこして舐めあっちゃったりしちゃってたりするんですが、コレは、ズバリ友達とは言えないよな。
恋人・・・の関係にかなり類似してる、とは思うんだけど、 ぶっちゃけ好きだなんて言われてないし、オレだって言って無い。
好きか嫌いかで言えば・・・・、憎めないって感じ?(好きか嫌いかで言ってないし!)
うーん、ハッキリ言えば、オレから好きだ、なんて言いたく無い。
だって、勝手にあっちが好きになったんだろうし、なのに、アイツが、告ってないのに、なんでオレが告るよ?
いや、そんな事よりもアイツに彼女はいるのかどうか?
いるんだったら、オレに居たっていい訳だし?うん。よし。
それだけ聞いてみるか。彼女いるのかどうか。
・・・・居ない場合、オレはどうするべきか・・?
と、三時間目の休み時間、携帯を開いてはみたが、掛けられずに見つめていると、丁度、ワタヌキからの着信。
「モシモシ?」
『モリヤ?』
ワタヌキの声。微妙に笑ってるような機嫌のよさそうな声だった。
「うん。何?」
『ちょっと降りて来いよ。二階の中央廊下にいるから』
「え、もう鐘鳴るけど」
『少しだけだ』
顔でも見たいって事?
「わかった。今行く」

オレはのこのこ赴いた。ここで教訓。
ワタヌキの甘い声には絶対騙されるな!
そうオレはもう二度と騙されない!!

のこのこと出向いたオレをワタヌキは射殺さんばかりに睨みつけた。
「センパイ・・何デスカ?」
ここでもオレは失敗している。何デスカじゃない。
何カ御用デスカ位い言っておくべきだった。
冷え冷えとした眼光。
アンタさっきのネコ撫で声はどこいったんだ。
オレの顔が冷たいなんて比べ物にならない。こんな相手とマッチアップしなきゃならない奴は悲惨だろうな。
「来いよ。モリヤ。逃げたらただじゃおかねーからな」
キスされるのかと思う位、近くでメンチきられて(睨まれて)、
オレは喉に舌が詰まった。
何だ?何なんだ?何でこのオトコはこんなマックスな怒りをオレに
ぶつけてくるんだ!?
訳の分からない不安が、オレの耳元で鼓動を大きくさせる。

一度も振り返らずに、ワタヌキは中央廊下から理科棟に渡り、 右に折れる。
そのまま真っ直ぐ行って、突き当たりの教室の前で壁に
寄りかかった。
再び、あの鋭利な眼光がオレを突き刺す。
「入れよ」
音楽室。
まさか・・。まさか、知ってる訳無いよな・・?
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