本編

□体育会系色
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朝練を終えた、北村(同級生)からの伝言で、オレは休み時間 に職員室へ向かった。
同様、ワタヌキの姿が職員室前にある。
あの目が見れずに、無言で近づいた。

「お前、膝が痛てぇとか、言うなよ」
え?と言う間も無く、ガラガラと引き戸が開かれる。
「失礼しまーす」
ワタヌキの声に、一瞬こちらに注目が集まる。嫌な感じ。
「おう」
ゴンゾーさん(監督)が軽く手を上げる。
ゴンゾーさんは、ちょっと年配の白髪混じりのおっちゃんだ。
室内でも薄茶のグラデーションがかったグラサンを掛けている。
手にしたモノサシで肩を叩きながらしゃがれた声で問う。
「ワタヌキ、朝練来なかったな、どうした?」
「スミマセン、ちょっと寝起きに足攣って動けませんでした」
なんて、ぬけぬけと!!
オレは思わず顔を顰めそうになった。
あんな事しといて、よくそんな理由が出るな・・コイツ!
「ふン。そうか。もう大丈夫か?午後は出れるか?」
「ハイ。平気ッス」
うんうんとゴンゾーさんは頷くと、こっちへモノサシを振る。
「お前は?・・・一年の・・」
「森谷です。オレは、ちょっと膝が」つい言ってしまった。言ってからワタヌキの眼が渋くなるので、
あ、と気づいた。
「なんだ、お前、膝悪いのか?」
「あー」去年、
と言おうとしたところで、とんでもないセリフが聞こえた。
「え!?」
今、なんと言イマシタ?センパイ?
もう一度、ワタヌキが口を開く。
「ウソ、つくな」
ゴンゾーさんもびっくり見上げている。
「お前、駅前でチャリの二ケツでケーサツに捕まってたじゃねーか」
ハぁ!?何言って・・・?ゴンゾーさんが、大きく嘆息した。
オイオイ、あんたの言動効きすぎなんだよ。何て事言うんだ、これで
オレの印象、悪くならないか?
寝坊か?と聞かれて、ハァと答えた。だってそういう流れになっちゃ ってるんだもん。
「お前な、それじゃ急いでたって意味ないやろ。そんなんで事故った ら、元もこも無いんやぞ」
その後、チャイムが鳴るまで説教は続いた。たぶん5分位だったと思うけど。
かなり、ムカついた。
職員室を出て、一刻も早くここを立ち去ろうとした。一歩目。
「お前、言うなっつったろうが」
小声だったが、地を這うような低い声が耳元で響いた。
ビビッた。正直ビビッた。
固まるオレの腕を、強引に引いて歩き出す。
「あ、アンタだって、足がどうとかって言ってたじゃねーかッ」
「足攣る位い普通だろ」
まただよ。またオレはこうやってこのオトコにズルズル引きづられて いる。
オレは校舎の端のトイレへと連れ込まれた。
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