未来ノート

□カネダのその後
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世の中には、腐った奴程、上にいる。
そう悟ったのがいつだったのかなんて覚えちゃいない。






金田 閏弥(カネダ ジュンヤ)23歳。








上稜高校を卒業後、大学に進学した俺は、今はとある事務所で議員秘書の仕事をしている。
仕事の内容は、つまらない書類の整理から、これまたつまらない電話対応に、融資の相談。
車も運転すりゃ、議員先生のメシの世話まで、とにかく有りと有らゆる下らない事が俺の仕事として任されている。


こうなる始まりは、親の頼みでやった選挙の手伝いからだった。
大学でも割と優秀な方だったせいと、自分でいうのもなんだが、見た目もそう悪くないし、ソトヅラのいい笑い顔が気に入られたんだろう。
仕事を手伝って貰えないかと誘われ、この事務所に通う事幾数年。
大学を卒業した俺に議員先生から、第2秘書という何でも押し付けられる役職を配された訳だ。
俺は先生と握手し、胸の内では『クソッタレ』と悪態をつきながら、笑顔で「任せて下さい」と礼をした。




我が大先生『明日の党』の議員『関 はるただ』。
小さな雑居ビルの5階にある二部屋が、その個人事務所だ。
一つは俺達の仕事場、一般的な事務室。
もう一部屋は議員室兼応接室だ。
壁一面の窓に、先生の木目調の机、その机の前には、艶のあるシックな濃褐色の革張りのソファーセット。
部屋の壁には天井まで付きそうな大きさの扉付きの重厚な本棚、これ見よがしに法律、経済、歴史の本から経済評論家、経済アナリスト、有名著名人の本に、アスリートまで、様々な本という本が、隙間無くぎっしりとその棚を埋め尽くしてある。


テーブルの上には一見質素に見える薄透明なデカイ灰皿が置かれているが、誰一人として使う者はいない。
その無用の長物の値段が15万だと聞いて、庶民の俺は目を見開いて驚いた。
この部屋の中にはそんなモンが幾つかあるが、金の無い議員に媚を売るバカは居ないから、本人の意思に沿わなくても、そういう小道具が必要なのだと教えられた。
まあ、それも貰ったもんなら尚都合がいいって訳だ。
なんとも高級感溢れる、見事に虚栄を張った、意地らしい風情だ。










「オラ!ケツ出せよ」


とても朝の議員事務所から聞こえてくるような台詞では無いが、事実ここはその議員事務所だ。
「ヒッ」
「誰が、零していいっつったんだ?オイ!?」


俺は煙草を燻らし、目の前の荒淫を眺める。
まるでヤクザ映画みたいな土下座だ。
ただそれをさせているのがヤクザでは無く、議員先生。
でも、無く。
第1秘書の田口だということ。
じゃあ、誰が土下座をしているのか。
言わずもがな。
議員先生の『はるただ』だ。
朝の正しい挨拶運動も楽じゃない。


「もう、いいじゃないですか」


俺の声に田口が目を剥いた。
余程驚いたと見える。
はるただでさえ、床から顔を上げる程だ。
「先生。俺達は2時間も前からここで準備してたんですよ?」
薄らと笑みを乗せた口元を動かすと、はるただは、床についた手をブルブルと震えさせる。
「でも、もう許してあげますよ。たかが30分の遅刻くらいね。遅刻なんてものは、社会人たるもの決して許されるものではありませんが・・」
それから、田口に顎でしゃくる。

ヤれ。

田口が自分のベルトを外し、ズボンを下げる。
次はお決まりの挿入な訳だが、
「オイ、口」
俺が自分の口を指差すと、はるただは慌てて両手の平で自分の口をしっかりと塞いだ。
そして。
男の大きなうめき声が、室内に響く。
「口を閉じてても、それじゃ・・外のトイレでヤったのなんか、バレバレだったろうな・・」
くすくすと笑いが込み上げてくる。
「金田・・!こいつイきそうになってるぜ・・っ」
まるでフィットネスのマシーンで腰の運動でもしてるように、田口が一定のリズムではるただを突き上げている。
「ああ。ちょっと待って」
はるただの弛んだ腹にくっついて今にもみっともなく爆ぜようとしている性器の下へ15万の灰皿を置いてやる。
「ああ・・それは・・ああっ」
後ろから突かれるまま、はるただは制御不能の射精を果たす。
「オラ!もっと締めろよ!」
丸みを帯びた尻を田口に引っ叩かれて、はるただは背を仰け反らせた。
「おお・・っ出るっ出るぜっおお・・」
俺ははっきり言って田口のこのイキ方が大嫌いだ。
今度、この台詞を吐くようなら、はるただの出した精液で自分の尻孔を抉らせてやりたい。
そうだな。
その時ははるただにもヤらせてやるか。

「さあ、先生、朝の挨拶運動に行きますよ」
俺は灰皿の中に出されたザーメンを櫛になじませる。
その櫛で、はるただの乱れた髪を梳かし、後ろへと撫で付けてやる。
それを見た田口は、片手間に自分のチンポをおしぼりで拭ってキレイにしながら、「いいねえ」と噴き出した。
「国会議員の身だしなみの緩さは、尋常じゃ無いですからね・・。あなたはきちっとなさって下さいネ」
はるただは、しもやけ顔を赤らめて「はい。ありがとうございます」と礼をした。
ネクタイもしっかり結び直し、仕立てのいいスーツを着せれば、一人前の社会人に見える。
それでも、二世特有、ボンボンの肥えた身体にお人好しそうな性格が、顔に出ていて、普通のサラリーマンとは一線を画している。

「さあ、出来上がりです。もう、今日はミスが無いようにお願いしますよ先生」
俺は、はるただの顔が印刷されたビラを持ち、はるただにスピーカーを持たせると歩いて10分の駅前へと出発した。
「あ、そうそう。その髪匂いますよ。あとでシャンプーしてきて下さいネ」
顔を少し赤らめたはるただが小さく「ハイ」と頷いた。
今すぐ洗わせてくれと言わない所が、よく出来ている。
そして駅前の人通りの多い中、先生は青臭い雄の匂いをさせながら、誰も聞き留めない演説を読み上げていった。



end

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