超番外編

□ソレカラ
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また昼が来て、夜になって、朝。
目が覚めて5分位。
まだ朝の6時半過ぎだった。
インターフォンが鳴った。

こんな朝早く。
がっかりする。
だって絶対ランじゃねえもん。

「・・はい。」
カメラには、銀縁の硬いメガネのサラリーマン風の
オトコ。
『シノノメと申しますが、シガ ランさんですか?』
「あ〜・・・、今ちょっと居ないんすけど」
『そうですか。少し上がらせて頂いても?少しお話
しておきたい事があるんですよ』
「・・・はぁ。じゃ、どうぞ・・」

フツウに考えればカナリ非常識だったと思う。
でも、ランの客だと思ったら断るなんて思いもつか
無かった。

不覚。

ロックを解除して、制服に着替え終わる頃、再び呼
び鈴が鳴る。
確認もしないでドアを開くと、逆に勢い良く、ドア
を引かれた。
「わっ何すんっ・・・!!」
ドカドカと三人の男が部屋の中へ入って来る。
「な、なんなんだよ!?何やってんだよ!?」
男達は無言で勝手に部屋のドアを開けて行った。
「隠れてないなら、すぐ出て行く。少し勘弁して貰
おうか」
振り向くと、シノノメが立っていた。
カメラ越しにはサラリーマン風にしか見えなかった
姿が、そこに立たれて初めて、筋者とわかるオーラ
を放っていた。
土足のままシノノメが進んでくる。
「名前は?」
ゴクリと唾を飲み込んだ。後ろでは、部屋の中を荒
らされる音が響いている。
「・・・カミジョウ、セイショウ」
眼鏡の中の鋭利な目が動く。
「ほう。カミジョウ?最近見つかった弟の方か」
シノノメには、既に知らされていた情報らしい。
「兄貴の方が先に消えてるが。・・・一緒か?」
・・・!!
「一緒・・・?」

一緒って・・・ランと、・・ゲンが?

あの夜。

ゲンが、迎えに来たっていうのか・・・?

「知ってるってツラだな」
「なんなんだよ・・!?いったい誰なんだよ・・?
あんた達、何が目的なんだよ・・・!?」
シノノメが低く笑う。
「金さ」

金・・?

「何の?」
「シノノメさん」
聞くと同時、オレの後ろからシノノメに声が掛かる。
シノノメは答えず、目だけ向けた。
「何もかも置き去りですね。手間は省けましたが、
焦げ付きますよ」
「いくらあった?」
「100か200がいいとこです。
ここは賃貸らしいんで当てになりませんが、店の
権利書やら土地の借地権やら通帳、カード、印鑑、
携帯、財布、ごっそりありましたよ。珍しいもんです」

ソイツは、こんだけ残して、生きてるんですかねって
笑った。

生きてる・・・?生きてるって、死んでるって疑って
るって事・・・!?

「それじゃあ、上手くねえだろう。生きててもらわな
きゃな」
シノノメが目で三人を外に追い出すと、再びその目を
オレに向けた。
そして静かに言う。
「確か、17だったな。なんでここに住んでる?」

ズバッときた。
それは、日々オレが自問自答を繰り返してたセリフ。

「・・オレの勝手」
フフンとシノノメが鼻で笑った。
「聞くだけ野暮か」
視線が一度下へ落ちて。
次の瞬間。
シノノメの指がオレの顔を掴んだ。
「イッ!」
「テメーを、取ったら、ヤツは帰ってくるか?それ
とも。キョウダイ揃って世話になってるんだ。
オマエの親父に言えば慰謝料ぐらいシガに払ってや
ってくれるんじゃねえか?2千万くらいあの男にと
っちゃ、端した金だろう」
「放せ!!」
腕を払い除けて後ろに下がるとすぐ後ろは壁だった。
「何の!何の金なんだよっ」
シノノメは楽しそうに笑って言う。
「借金さ。店のな。借りたモノは返す。道理だ」

ランが・・・借金・・・?あの店の・・?
こんなヤクザに・・・?

「シンジランネエ・・・」

「なんなら、オマエが払うか?金は誰が払ったって
価値は一緒だ。それが金のいいとこだ」
シノノメがオレのタイをグッと強く引いた。
胸が反る。
それでも、壁にオレは張り付いたままシノノメを睨
んだ。
その顔が笑って、オレのタイを結び直す。
「ボッチャン学校は楽しいか?これから、オマエの
周りを張らせてもらうぞ。学校生活を楽しく送りた
かったら、早く、シガの居場所を教えろ」
「・・・知ってりゃ。ここで待ってねえよ」
「・・・(そんなことは)知ってるさ。じゃあな」
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