本編2

□x'mas オムニバス
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品定めするようにすれ違う人間に目を遣る。

一瞬目が合うと相手はオレを振り返る。


脈アリかよ。んな奴ゴメンだっつーの。喜ばしてどうすんだっつーの。

オレは滅茶苦茶に傷ついた顔を見てーんだから。

泣いて抵抗する顔殴って、その辺の階段で丸裸にして犯してやる。

アンタがここを通ったからだって言ったらそいつはどんな顔するだろう?

死にそうな顔するかな?

死にそうな顔?

そんなもん毎日鏡で見飽きてる。

つまらねえな・・・。


萎える。

バカらしい。

何もかもがバカらしく感じて、オレはまっすぐ帰る。

全てを頭から追い出せばいいんだ。

どうせ、もう冬休みだ。外さえ出なけりゃこの浮かれた雰囲気も目にしなくて
すむ。

マンションのエントランス。郵便受けを開ける。

やけに角の尖ったオレ宛の手紙。

しかも宛先が無い。

ひっくり返す。

そこに。

オレが愛してた男の名前。

”ハチヤ ユウイチ”

オレをずっと愛してるって言った男の名前だった。

胸が少し熱くなる。

手紙を胸に抱いて、ハチヤを思い出した。

イカレたオレを愛してくれたハチヤ。

まだ。

オレを忘れてないって?

封を切る。

元気か?とかそんな内容。

でも最後の締めに。

”いつもジュンヤがどうしてるか思ってる”


誰かわけわかんない奴なんかヤルより。

ハチヤを抱きたくなった。

抱いて、好きだって言いたくなった。

今ならわかってるから。

オレはアンタが好きだった。

アンタだけがオレの救いだったから。


マンションのエントランスから再び出る。

ゆっくり歩く。

歩きながら制服だって事も気にしないでタバコに火をつけた。

大通りへ出る。

空からは雪がチラついていた。
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