本編2

□春ナギ
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2年になって。

変な感じ。

いつも通り過ぎるだけだった階下に向かう。

4階から3階へ。

これで、もう朝練の後に慌てて、4階まで昇らなくていいのだと思うと軽くガッツポーズしたくなった。

なんとなく近寄りがたく(神聖っぽく)感じてた2年の教室。

別にどうも変わらない、4階と同じように教室が並ぶだけ。

壁だって一緒。白っぽいけど白くない、落書きが違うくらい。

今日からはここに机がある。

嬉しく思う反面少しさびしく思うのは。


ワタヌキタツトが居たあの席に、今は誰か知らない奴がいること。


しょうがないけど。


少しだけセンチって気分になる。


ただの椅子と机。

自分でも思ってもみなかったけど・・・あの席だけが一目で目に止まる。

ずっとあこがれて、あこがれて。

だけど、きっとこうなんだろう。

追いついたと思ったら、あんたはもうそこには居ないんだ。

きっと跡を追うしか出来ないんだ。

あんたが居た跡を追っていくしか。

「モリヤ〜席、出席番号順だって〜」

キタムラの声にオゥと答えて、オレはあの席から目を離した。

いろんな奴とすれ違いながら、フと振り返ってみる。

やっぱりセンパイはここにはいない。

似たような背中が見えた気がしただけ。


あと、一年。


あと一年であいつも居なくなる。



オレは胸になにか巨大なものを抱えた気がした。

なにかをしなくちゃ。

アイツがいる内に、オレはやらなくちゃいけない。

漠然とそう思うだけで、なにを?とは決められない自分が情けなかった。

でも、簡単に追いつける相手なんかじゃないんだ。
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