†シンキラ館†
□『邂逅』
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初めて向き合ったその人は、酷く優しい表情をした人で驚いた。
憎しみすら抱いていた相手が、まさか、こんな人物だったなんて。意外すぎて。
暫く同僚だったアスラン・ザラからは、煩い程にその名前を聞いていたけれど。声は。
「吹き飛ばされても、人はまた花を植えるよ?」
初めて聞いた声は、甘く耳の奥に染みて。
その台詞に初めて気付いた。前に慰霊碑で、出会っていたのだと。
自分はすっかり忘れていたけれど、あんな僅かな邂逅を覚えてくれていた事に少し感動する。
「一緒に闘おう。……ダメかな?」
そうして差し出された手は、思いのほか大きくなくて。
苦笑を浮かべた彼の心境を思うと、涙が出た。
―――俺はこの時、僅かなりにも後悔したのだろうか?
こみあげる理由は、今はまだ解らないけれど。
薄い手のひらを握り返すと、その人は嬉しそうに微笑んだ。
この日から、たった数ヶ月後。この人が、すぐ隣で笑っているなんて想像もしてなかった。
「僕達の出会いの方が、運命っぽいよね?」
そんな風に言われたら―――。
ただ俺は頷いて。華奢なその体を抱き寄せた。