†シンキラ館†
□『華の詩(うた)・二部』
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「いらっしゃいませ、イザ-ク様…お変わりなく何よりです」
「お前も、元気そうだな。変わりはないか?」
「……はい」
高級娼館『薔薇の館』に、半年ぶりのイザ-クの訪れだった。
玄関まで迎えに出たキラに、イザ-クは深い海の色の瞳を深めた。
「いや、変わりなく…は無いか?」
「え?」
「綺麗になったな。まるで、恋でもしている様だ――…」
「――…!」
探る様なイザ-クの眼差しに、キラは一瞬ギクリとして言葉を詰らせた。
「冗談だ…、そろそろ部屋へキラ?」
「はい…イザ-ク様」
答えたキラはホッとしたのか、花の様に笑った。
それに満足して、イザ-クは細いキラの腰に腕を回して連れだって部屋へ向かう。
噂を聞いたのだ。半年ぶりに帰って来たこの町の軍本部で。
貴族出身の、まだ入隊したばかりの若い小尉が、薔薇の館の男娼の元へ頻繁に通っていると。
最近では、昼間も仲睦まじく街を歩く姿を見る――…、そんな噂だった。
薔薇の館の男娼はキラ一人だから、間違い無くキラの事だろう。
しかし今までのキラは、昼間にまで客と会う事は無かったはずだ。