†シンキラ館†

□『華の詩(うた)・二部』
1ページ/58ページ

「いらっしゃいませ、イザ-ク様…お変わりなく何よりです」

「お前も、元気そうだな。変わりはないか?」

「……はい」

 高級娼館『薔薇の館』に、半年ぶりのイザ-クの訪れだった。

 玄関まで迎えに出たキラに、イザ-クは深い海の色の瞳を深めた。

「いや、変わりなく…は無いか?」
「え?」

「綺麗になったな。まるで、恋でもしている様だ――…」

「――…!」

 探る様なイザ-クの眼差しに、キラは一瞬ギクリとして言葉を詰らせた。

「冗談だ…、そろそろ部屋へキラ?」

「はい…イザ-ク様」

 答えたキラはホッとしたのか、花の様に笑った。
 それに満足して、イザ-クは細いキラの腰に腕を回して連れだって部屋へ向かう。


 噂を聞いたのだ。半年ぶりに帰って来たこの町の軍本部で。

 貴族出身の、まだ入隊したばかりの若い小尉が、薔薇の館の男娼の元へ頻繁に通っていると。
 最近では、昼間も仲睦まじく街を歩く姿を見る――…、そんな噂だった。

 薔薇の館の男娼はキラ一人だから、間違い無くキラの事だろう。
 しかし今までのキラは、昼間にまで客と会う事は無かったはずだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ