†キリリク館†

□『灰色の偶像』
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 美少女清純派アイドル『キラ・ヒビキ』の引退は、本当に急で。

 人気絶頂期の引退だけに、惜しまれた。引き留める声も多かったけれど、本人は以外とアッサリと。

『皆さん今まで、有り難うございました』

 と、ペコリと頭を下げて、長い栗色の髪をサラリと揺らして会見場を後にした。

 何しろ彼女は、まだ17歳なのだ。これからだろうに、注目の理由も曖昧で。

 14歳で女優デビュ-。歌手活動を得てトップアイドルに昇りつめた少女は、この日を境に姿を消した。

 正確には、沢山のマスコミが会場入口・裏口を張る中、出て行く姿さえとらえられたかったのだ。

 その後の消息はファンですら掴めず、事務所も、彼女を元々スカウトした社長も口を閉ざしていた。

 ネットでは、宇宙人説まで飛び出す始末。

「………ぷっ、おかしいの」

 栗色の髪の少女はパソコンをOFFにした。

 姿見の前に立つと、自分の頭から顔、体、足先までを順に見て。

「バイバイ、キラ・ヒビキ」

 一人呟くと、手にしたハサミで長い髪をバサリと切り落とした。
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