†キリリク館†
□『ふたり暮らし』
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住む場所はカガリが用意してくれた。オノゴロ沖に浮かぶ小さな島の、ただ一軒の家だ。
生活費は困らない。流されるまま地球軍に所属した時の給料も、オーブ軍に入ってからの給料も、殆ど使っていないから沢山ある。
一生遊んで暮らすほどには足りないけれど、慎ましく暮らせば十分だ。
それから間もなく長い休暇を取ったキラと、無職になったレイの、奇妙な共同生活は始まった。
「レイって、料理上手だよね」
朝が弱くて起きられないキラに、レイは毎日飽きもせず朝食を作ってくれる。
「趣味、のようなものですから…」
「…へぇ」
無表情に、それもたった一言で終わってしまった。なかなかに手強いのだ。
キラは引きつりそうな頬に鞭うって、笑顔を作った。
「…無理して笑う事はないです、キラ」
そんな事を言われてしまっては、正直に苦笑するしかない。
「ねぇ君は、どうして僕といたいって思ったの?」
この場では唐突だけれど、キラとしては、ずっと聞きたかったことだ。
なんとなく聞きそびれては、いたけれど。
だって不思議だったのだ。敵対していたはずなのに、一緒にいたいと思うなんて。
「…わからない」
返って来たのは、そんな一言で。
「そう…。変な事聞いてごめんね」
なんとなくキラは落胆していた。落胆したということは、何かを期待したということだ。
――何を。その答えは、キラ自身にも判らなかった。