†キリリク館†
□『ふたり暮らし』
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二度目の戦争が終わって、キラはオーブに戻って来た。隣には宇宙に上がる時には居なかった者の姿がある。
メンデルで、たった一度だけ見た仮面の人の顔、ラウ・ル・クルーゼと同じ顔をした――レイ・ザ・バレル。
戦争中レイからは漠然と、憎しみのような何かを感じてた。けれど今はそれは無い。
あの時――最終戦時のメサイアで、キラに銃を向けた議長ギルバート・デュランダルを射ったレイが、何を思ってそうしたのか。
言葉の少ないレイが、語ることはなかった。
後になってから彼らは、家族のような関係だったと聞かされて、キラは切なくなった。
レイが射ったから、キラは今 生きているのかもしれないのだ。
そんなレイも、公式には死んだ事になっている。
メサイアで議長を射った直後、放心したレイを引っ張ってフリーダムで脱出した。
AAに辿り着いて、プラントに帰るかと問われた時、レイは首を横に振ったのだ。そしてたった一言呟いた。
「キラ・ヤマトと一緒に行きたい」
死亡扱は彼自身の希望だった。
どうせ長く生きれないならば、その時は今でも構わないのだと。
彼は、完成されてないクローンだった。
その告白は衝撃で、作ったのはキラの実の父ヒビキ博士のチームらしい。
最高のコーディネイターを生みだすのに必要な資金を得る為に。
ではレイという存在は、キラの兄なのか弟なのか。そんな不思議な感慨に、取り付かれた。
最高のコーディネイターとして、実験の成功者として生まれたキラと、不完全なまま生み出されてしまったレイと。
飲み込んで消化するには、時間が必要だった。