†アスキラ館†
□『僕達の事情』
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あの戦いが終わって、アークエンジェルに乗っていた主要な人々は、オーブへ落ち着いた。
アスランもキラやラクスと一緒に、亡命する形で降りた。
弱冠16歳で、オーブの代表首長となったカガリは、父ウズミには敵わないものの、頑張っている。
戦後、暫くぼんやりしていたキラは、最近やっとペースを取り戻したみたいで、ラクスと共に導師マルキオの元、彼の孤児院で子供達の世話をするようになった。
まだ子供の頃みたいな無邪気な笑顔は見せてくれないけれど、笑顔だけなら少しづつ見せてくれるようになってきた。
そしてアスランは名を変えて、ザフト時代に会得した戦闘技術をいかして、カガリのボディガードをしている。
それぞれが自分の生活に馴染み始めた頃、アスランはカガリに、かなり無茶な頼みごとをした。
『本当にキラも、合意してるんだろうな?』
そう言って睨むカガリに、アスランは余裕の笑を返す。
『当然だ』
『…わかった。なんとかしてやる』
カガリは溜め息を一つ吐(は)いて、何処か遠くを見るように視線をやる。
『…アイツには苦労させたからな。アイツの幸せの為なら、私はいくらだって力を貸してやるさ』
そんな会話をしたのが半年くらい前、アスランはカガリに、行政府へと呼び付けられた。
「待たせなアスラン。今日やっと議決したから、施行は最短でも来月くらいになるだろう」
少々疲れた様子の、カガリだ。
「すまない。苦労かけたみたいだな」
「まったくだ。だが、いい。可愛い弟の為だものな」
そう言って白い歯を見せた彼女は、快活に笑った。