†アスキラ館†

□『I'll be expecting you/未来編』
1ページ/5ページ

 出会ったのは、まだ春休み中の―――…。

 その日は、友人同士を集めての、お花見を兼ねた合コンだった。

 男も女も、皆が皆、其々に友人やら彼彼女(カレカノ)やらを連れて来ているから、知らない顔も多い。

 その中で、目を引く存在が彼だった。

「凄いよな、アイツ」

 友人のトールが言ったそれに、別の友人サイが同意する。

 アイツとは、藍色の髪の知らない顔の男子だ。誰かが連れてきた、恐らく他校生だろう彼は、沢山の女子に囲まれて笑っている。

「あら、かっこいいもん仕方無いわよ」

 と言ったのは、サイの彼女フレイ。少しミーハーな彼女は、すっかり目の色を変えていて。

「よしなさいよ、フレイ」

 たしなめたのは、彼女の親友でトールの彼女でもあるミリアリア。他にカヅイと…。ここは、そんな代わり映えしないメンツで固まって座っているシートだ。

 ざっと見渡すと、あちこちに幾つか敷かれたシートは、自然に元から知っている友人同士で分かれている。

 ちょうど満開の桜の園、そもそも、この場所には友人達以外の花見客もいない。


「アイツんちの私有地らしいぞ、ここ」

 だから他に人がいないのだと、何気に情報通なトールが言った。目は、あの藍色の髪の男子を指している。

 つられてそちらを見ると、藍色の髪の男子と目が合った気がしてドキリとした。

「どうした、キラ?」

「ううん、なんでも無い」

 慌てて視線を逸らしたキラは、手にしたオレンジジュースの入った紙コップを両手の平で抱えて唇を付けた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ