†キリリク館†
□『ほしいもの』
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彼は、何がとは言わなかったけれど。僕は、答える事も出来ずに。 「家、ちゃんと帰れますか?」 優しく、労るように接してくれるシンに、漸く安心して。頷いて。 シンと別れた帰り道の途中。手の中のモノを、ゴミ箱に捨てた。…筈なのに。 今日、学校に登校した僕を。シンが呼びとめて。 彼が自分の携帯を、僕に見せた時。ギョッとした。だって、そこには。ある筈の無いものがあったから。 彼の携帯のストラップ。それは、昨日僕が盗んでしまったモノ。…でも、捨てた筈なのに。 「…なんで?」 「さあ、なんでですかね?」 そうして。シンが僕に耳打ちする。 『放課後、科学室で待ってますから』 シンが、楽しそうに笑って行ってしまっても。僕は、暫く動けなかった。 僕は、憂鬱なまま1日を過ごして。―――放課後。