†キリリク館†

□『ほしいもの』
4ページ/19ページ

 彼は、何がとは言わなかったけれど。僕は、答える事も出来ずに。             「家、ちゃんと帰れますか?」                    優しく、労るように接してくれるシンに、漸く安心して。頷いて。               シンと別れた帰り道の途中。手の中のモノを、ゴミ箱に捨てた。…筈なのに。           今日、学校に登校した僕を。シンが呼びとめて。            彼が自分の携帯を、僕に見せた時。ギョッとした。だって、そこには。ある筈の無いものがあったから。                    彼の携帯のストラップ。それは、昨日僕が盗んでしまったモノ。…でも、捨てた筈なのに。                「…なんで?」    「さあ、なんでですかね?」          そうして。シンが僕に耳打ちする。                 『放課後、科学室で待ってますから』                 シンが、楽しそうに笑って行ってしまっても。僕は、暫く動けなかった。            僕は、憂鬱なまま1日を過ごして。―――放課後。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ