†キリリク館†
□『ほしいもの』
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「くすくす。…キラさん、もう逃げられないですね?」 「―――シン、本気なの?」 後輩、シンは。行き止まった僕に、ゆっくり近づいて。手を伸ばして、頬に触れてきた。 「本気です。…キラさんも、いいって言ったじゃないですか?」 「言ったけど…」 別に、好きで合意したわけじゃない。君が、言わせたんじゃないか。そう叫んでしまいたかったけれど。 今の僕には、彼に逆らえない理由があったから。 なんであんな事してしまったのか、わからない。欲しかったわけでもなくて。その店で、なんとなく手に取ったそれを、そのままレジを通らず 出てしまった所で。 シンに、出くわした。 それを手に握りしめて、呆然としてしまった僕の手を引いた。 お店から、ずいぶん離れた所まで。大人しく手を引かれた僕に。 「ビックリした。…大丈夫でしたか、キラさん?」