童話
□ヴェイグとクレア
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★おはなし★
ある大きな森の入り口に、貧しいきこりがおかみさんと二人の子供と一緒に暮らしていました。
男の子の名前はヴェイグ、女の子の名前はクレアといいました。
貧しい一家は、その日を生きるのに精一杯でした。
ある時、国中を飢饉が襲いました。
毎日食べるパンさえ手に入らなくなったのです。
夜、きこりはおかみさんに言いました。
「一体、どうなってしまうんだろうな。食べ物はもうないし、あの子達は成長期だし」
「マジカルポットがあるでしょ。大丈夫よ」
「……」
微妙な沈黙に包まれる二人。
(マジカルポットは取り上げます!)
「……明日の朝、あの子達を森の奥へおいてきましょう。帰る道は分からないだろうしね」
「そんな!! 可愛い可愛い(……多分。いや、可愛い)子供達を捨てられるわけないだろう!」
「じゃあ、あんたを捨てるわよ」
「子供達を捨てよう」
なんて酷い父親でしょう。
(最低です、ユージーン……)
子供達は、眠っていなかったので、二人の会話を聞いてしまいました。
クレアはオロオロしながらヴェイグに言いました。
「私達、もうダメなのね……」
「いや。ここからが始まりだ。二人きりの――……ぐふっ!!」
「ヴェイグ〜? 私達、もうダメなのね」
クレアのパンチを食らったヴェイグは、一瞬キレイなお花畑が見えたそうです。
取り敢えず、クレアはもう一度同じ事を言いました。
「静かに、クレア。悲しまなくていい。オレが何とかしてやる」
両親が寝静まった頃、ヴェイグはこっそり外へ出て行きました。
外は月の光に満ちていて、家の周りにある白い石は、宝石のように輝いていました。