Novel

□Resident over the door
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〜Their value.〜

 ウォーゲーム1stバトルが終了したのは、ちょうど真昼時だった。
 3対3の勝負で勿論こちらの勝利。昼食はレギンレイヴ城で用意されていたものを食べ、午後は全員各々自由に過ごしている。
 はるばるルベリアから仲間の敵討ちの為訪れたナナシも昼からは晴れて自由の身だ。
 いつもなら暇があらば可愛い女の子とどこぞへ遊びに行くのが自分の常なのだか、その日に限っては自身に当てられた部屋にいた。
 といってもこの部屋はウォーゲームに参加する男連中全員にあてがわれた部屋なのだからプライベートも欠片もない。最も昨日のように女も男も関係なく一括りされていないだけマシだが。
 それに今部屋にいるのはナナシ一人だけ。この広々とした空間を自分一人だけの貸しきり状態となっていた。
 自身の体をベッドへと横たえながら今日の試合の様子を頭の中で反芻させる。
 まずは第一試合、無駄の無いロッド捌き、そして一撃で敵を沈めたアルヴィスは間違いなく即戦力になる戦士だ。
 そして第二試合、農夫のジャックには正直まったく期待してなかった分、今回の戦いぶりはなかなか感心させられた。現時点では一番弱いが、恐らく一番成長することだろう。
(しかしあれは痛そうやったなー…)
 奇しくもK.О.となった相手側の最後の攻撃を思い出し、ほんの少しジャックに同情する。
 最後の第三試合、十ものARMをコントロールする男に、見事勝利をした。最も能力が未知数なのはキャプテンとなった異界の少年、ギンタだ。
(ひょっとしたら、自分結構楽して仇とれそうや)
 本当は直接見つけ出し、けじめをつけさせたかったが、まさか敵の本拠地のレスターヴァまで一人で乗り込むことが出来るはずもなく。ナナシは正直ウォーゲームには興味はなかったが、ペタという仲間の仇を討つのにはなかなか厄介な手順というものが存在したのだ。
 ウォーゲームの参加者となるという面倒臭い事をしたのもそのため。だが手順さえちゃんと踏めばソイツはきっと必ず自分の目の前に出てくる、そんな確信めいた予感があった。
(自分の狙いはペタっちゅうただ一人、他はどうでもええ)
 だが、それまではMARには何が何でも勝ち上がって貰わないといけない。
 こちらにはどれくらいの価値のモノがあるのか、正確に見極め勝ち続けなければならない。そのための品定め。
 そんな思考の渦の中にいるナナシを現実へと引き戻したのは、扉の向こうの物音だった。




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