「遅い…」
待ち合わせ場所は神社の境内の前に七時。
そう言ったのはアイツなのに…
時間を見ようと鞄から出した携帯の時計表示ば7:32゙
32分オーバー。
毎日毎日 遅刻してくる人だから どうせ今日も遅刻するんだろうなって思ってたけど。
「はぁ…」
ほろりと溢れたため息。
そう思ってたけど…私は何処かで 今日くらいは五分前には、ううん。時間ぴったしにはアイツが来てくれるんじゃないかと少しだけ期待してた。
だからこそ 今日はいつもより落ちこむ気持ちが深くて…
「赤也のばーか…」
今 目の前にいない人に悪態ついたって仕方ないんだけど…
。
境内の前の石段に座り込んだ時だった。
もともと此処はお祭りの喧騒から離れてて 仄かな灯かりしか届いていなくてそれがふっと更に暗くなった。
そして上からは 今にも走って来ましたよ 的な荒い息遣いが聞こえる。
「ごめッ…本ッ当!ごめん!遅れた!」
ゆっくりと顔をあげれば汗ダラダラで肩で息をしてて浴衣姿の赤也が…
浴衣姿…?
「悪ぃッ!コレ着んのにてこずっててよ… んなに遅れんだったら着てこなきゃ良かったぜ…
…今日はなんも言ってこねぇの…?」
いつもなら 遅れた赤也にくってかかる勢いで責めたてるのに 私は赤也をずっと見上げていた。
「…手。」
「え?」
「手出して」
「おぅって…おわ!」
差し出された手を借りて立ち上がった。赤也は驚いたみたいだけどしっかりと私の手を握ってて二人して転ばないようにしてくれる
「早く行こう!お祭り終わっちゃう!」
「お、おう…怒ってねぇの?」
赤也の手をぐいぐい引っ張って石段を降りる 立ち止まり赤也の方を見上げればちょっと不思議そうな顔してるのがわかった。
。
「…別に?」
「別にって…何だよ?」
「別には別にだよッ!ほら!赤也、走って来て喉乾いてるんじゃない?かき氷食べよう?」
そうだなッ と満面の笑みを私に向けた赤也は手をしっかりと握って石段を先に降りて行く。
下から溢れる程の光を浴びていた浴衣姿のキミを見て不機嫌な気持ちなんて吹き飛んでしまったって事は石段を全部降りてから伝えよう。
煌めく世界ときみ
。