魔界近郊

□★悪魔
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 みづきには、ちょっと変わった悩みがあった。彼女には、悪魔がとり憑いていたのだ。

 いつ頃からか分からない。ふと気が付くと、頭の中で自分以外の、然もどうやら男らしい声が聞こえてくる。それは甘美な囁きというか、所謂魔がさすといったものに近い。随所随所で、みづきを誘惑に突き動かそうとした。

 が、そんな声に踊らされるみづきではなかった。みづきは元来自我が強く、他人に干渉されるのを何より嫌っていた。それが、普通の人間にとってどんなに飛びつきたいような状況でも、彼女にとっては煩わしい声でしかない。そう、悩みというのも、ただ単にこの耳障りな声が聞こえなくなってくれればいいのに、という単純なものだった。

 これには、悪魔の方も文句タラタラだ。

おい……おい……聞けっつぅの、聞こえてんだろコラ!

 何を言われても完全無視。みづきの攻防は鉄壁だ。

「あのさぁ、耳を貸すくらい、いいんじゃないの?折角こうしてめぐり合ったんだしさぁ……あっほら、あの先公嫌いだろ?ちょびっとホラ……俺ならバレずに色々出来るよ?」

 意識の一部を貸してやっているんだからこの上耳まで貸したくない、ついでにめぐり合ったんじゃなくてそっちが勝手に居座ってるんじゃないか、と、心の中だけで思う。

「おまっ、ホントに口は達者だよな。惚れ惚れするぜ!その調子で、俺らの仲間になってみねぇ?絶対気に入るぜ」

 しゃくなことに、みづきが考えたことはある程度悪魔にも分かってしまうらしい。

 毒づいても悪魔を喜ばせてしまうらしく、不本意ではある。だが、それでも悪魔の本来の目的は果たせていない。聞く気もないので詳しくは知らないが、どうせ魂を頂戴、みたいな所だろう。一時の気の迷いで、己の人生を棒に振るなんて冗談じゃない。みづきは人一倍プライドが高かった。自分の人生は己だけのもので、いかなる条件であってもそれを踏みにじろうとする輩は許せない。





(もちょっと続きます。)
所要時間は,1時間?最短記録かも。
一応,みづきが主人公?
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