鳳凰の巣
□生まれてきてくれて…ありがとう
1ページ/4ページ
君の喜ぶ顔が見たい。
でも、何をすれば喜んでくれるのでしょうか?
生まれてきてくれて…
ありがとう。
「誕生日おめでとうございます、ヒノエ」
朝、ヒノエににこりと微笑んでそう告げたのは武蔵坊弁慶その人。
「何、いきなり。」
文字通り起きたばかりのヒノエは何の事か首を傾けた。
「いえ…僕の時に祝って頂いたので……お返しにと思ったんですけど」
如月の十一日、覚えていますか?と付け加えていつものようにクセのある髪を手櫛で整えていく。
「あ?あぁ、誕生日…今日?」
「はい」
暦は確かに弥生の一日。
やっと納得したヒノエは興味無さげに「ふぅん」と鼻を鳴らした。
「…という事で、今日は何でもいう事を聞いてあげますよ。何が良いですか?」
「はぁっ!?」
流石のヒノエも突然の申し出に声を上げる。
「だから…僕にして欲しい事、とか欲しい物、とかあるでしょう?」
改めて言い直せば、今まで反応が薄かったヒノエに笑顔が宿る。
「何でも?」
「何でも。」
可愛い、と思った刹那。
ヒノエの笑顔はいきなり純粋さを失う。
「じゃぁ───……」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「弁慶、少し話があるのだが……なっ!?」
昼過ぎ、九郎は相談をしに弁慶の部屋に訪れた。
彼の橙の瞳は驚愕の色に染まった。
「ヒ、ヒノエ…////もう良いでしょう…??」
そこにいたのは紛れもなく、弁慶だった。
九郎が驚いたのは───彼が女性の格好をしていたからだ。
「今日一日聞いてくれんだろ?『何でも』。」
ヒノエは恥じらう弁慶の肩に腕を乗せ、先程の言葉を繰り返す。
「うぅ…///十二日にも着たじゃないですかぁ…(泣)」
そう、彼が身につけているのは弁慶本人の誕生日に冗談で贈った着物。
「べーんけ、今日は『ヒノエ』じゃないだろ?」
九郎に気付いたヒノエが弁慶の前に立って見上げて確認、というか責めるような口調で告げた。
どうやら弁慶が九郎に気付かないように、との思惑らしい。
「…ぬ…『主様』…///」
「よく出来ましたv」
.