鳳凰の巣

□生まれてきてくれて…ありがとう
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君の喜ぶ顔が見たい。
でも、何をすれば喜んでくれるのでしょうか?








生まれてきてくれて…
ありがとう。











「誕生日おめでとうございます、ヒノエ」



朝、ヒノエににこりと微笑んでそう告げたのは武蔵坊弁慶その人。



「何、いきなり。」



文字通り起きたばかりのヒノエは何の事か首を傾けた。



「いえ…僕の時に祝って頂いたので……お返しにと思ったんですけど」



如月の十一日、覚えていますか?と付け加えていつものようにクセのある髪を手櫛で整えていく。



「あ?あぁ、誕生日…今日?」

「はい」



暦は確かに弥生の一日。
やっと納得したヒノエは興味無さげに「ふぅん」と鼻を鳴らした。



「…という事で、今日は何でもいう事を聞いてあげますよ。何が良いですか?」

「はぁっ!?」



流石のヒノエも突然の申し出に声を上げる。



「だから…僕にして欲しい事、とか欲しい物、とかあるでしょう?」



改めて言い直せば、今まで反応が薄かったヒノエに笑顔が宿る。



「何でも?」

「何でも。」




可愛い、と思った刹那。
ヒノエの笑顔はいきなり純粋さを失う。



「じゃぁ───……」





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「弁慶、少し話があるのだが……なっ!?」



昼過ぎ、九郎は相談をしに弁慶の部屋に訪れた。

彼の橙の瞳は驚愕の色に染まった。



「ヒ、ヒノエ…////もう良いでしょう…??」



そこにいたのは紛れもなく、弁慶だった。
九郎が驚いたのは───彼が女性の格好をしていたからだ。



「今日一日聞いてくれんだろ?『何でも』。」



ヒノエは恥じらう弁慶の肩に腕を乗せ、先程の言葉を繰り返す。



「うぅ…///十二日にも着たじゃないですかぁ…(泣)」



そう、彼が身につけているのは弁慶本人の誕生日に冗談で贈った着物。



「べーんけ、今日は『ヒノエ』じゃないだろ?」



九郎に気付いたヒノエが弁慶の前に立って見上げて確認、というか責めるような口調で告げた。

どうやら弁慶が九郎に気付かないように、との思惑らしい。



「…ぬ…『主様』…///」

「よく出来ましたv」








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