鳳凰の巣

□れっつさぷらいず。
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如月生まれ、それが奴らしいと思ったのは記憶もおぼろ気なガキの頃。

白い肌や常人らしからぬ体温の低さ…今考えれば確かにそうかもしれない。



こっちには生まれた日を祝う習慣がないから───なんてのは理由にならない。

間に合わせてやる。

絶対にその皮肉めいた顔、リンゴにしてやるからな。









如月の十一日。
俺たちにしてみりゃ暦の春。
特に今日は暖かい方だ。

───弁慶が縁側でうとうと微睡んでる程、な(笑)



「…はは。うたた寝してら」



そして今日は、俺の可愛い(っつうとアイツ怒るけど)姫君の誕生日。



『いいですよ…別に。時間もそうありませんし、あなたも暇じゃないでしょう。そもそも祝ってもらうものでもないですし』



…っとと。
これは昨日の弁慶の台詞。


要約。
『間に合う訳ないんですから、無理しないで下さいv』


皮肉まみれだな(笑)
てか素直に祝ってもらえよ。
遠慮し過ぎなんだよ、アンタ。



「さて…と。」










夕陽が山肌に沈み始めた頃。


「…ヒノエ、何をしてたんですか?ボロボロですけど…」

「あ?あぁ…色々」




肩で呼吸をしながら頬の土を手の甲で拭う。



「説明してる暇はねぇ…っ!ほら弁慶、早く来い!」

「え?」



かなり強引に弁慶を引っ張って冬の海へと連れ出した。

弁慶は何が何やら分からない、といった風体で黄土色の瞳を丸くしている。


可愛い、なんて思うのは多分惚れた欲目なんだろうな(苦笑)



「…ひ、ヒノエ?」



寒々しい冬の海辺に戸惑いつつ俺より息を乱して名前を呼んでくる。

何?と表情だけで返すと、弁慶は繋いでいた手を離して続けた。



「こんな所に連れて来て…何なんですか───」



あなたは何を考えてるんですか、とでも続いただろう台詞は景時の盛大な花火によって掻き消された。



「!?」



花火は日の沈む直前の中途半端な空に上がっては弾ける。

明るさの所為でところどころ見えなかったりしたが、薄紫の空へ放たれた花火は嫌味なくらいに綺麗だった。



これを見せたかったんだ。



「誕生日おめでとう、弁慶♪」



景時はやや遠くの岩から顔を出し、花火を打ち上げながら手を振って祝いの言葉を叫んだ。


あの野郎。
俺もまだ言ってねぇってのに。



「か、景時…!?」


「驚くのはまだ早い。まだまだ序の口だぜ」

「えっ?」



ふん、と鼻で半笑いして弁慶の視界を景時から奪う。



「弁慶さ〜ん☆」

「弁慶v」



姫君と白龍の声は景時の背後から聞こえてくる。



「ハッピーバースディ!!」

「おめでとう」



姫君の言葉を合図に、白龍が満面の笑みで空を仰ぐ。

花火が終わると同時に熱を持たない小さな光が雪の様に降ってきた。

やるな、白龍。



「…でそれは皆からの贈り物。因みに中身は全部女物だ(笑)」



隠しておいた大きな袋を弁慶の横に置く。

女物、と聞いた途端に笑顔が苦笑へと変化する。



「…えっ…ι」

「はは。大事に使えよ?」

「き、気持ちだけ……いただきます…」



夕陽が完全に沈み辺りは闇に包まれていく。
降り注ぐ光を両目に反射させ、幾度か瞬きをした。
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