鳳凰の巣

□★光在らぬ常世の無情
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ある日、弁慶の目が見えなくなった。

「………困りましたね…」

「俺の所為だ……」

小さく呟く自責。
ヒノエは自分を責めるしかなかった。昨日、弁慶を連れ出したのは自分。
だから、こんな事になったのは…自分の所為だ。

「ヒノエ、それは」

こいつは俺に気を遣って、そんな事ありませんよ。とか、違いますよ。なんて言うんだろう。
でもさ、だけどさ。

「───他に理由なんざねぇだろッ!!!」

ヒノエは思わず声を張り上げて、問い掛けと言うにはあまりにきつく責めてしまった。

「……っ…」

大きな声で怒鳴った所為か、弁慶は酷く驚いて焦点の合わない瞳を丸くした。
声のした方、つまりヒノエの方を向いてはいたがその一対が彼の姿を捉える事はない。





『ヒノエ…今日はあまり方角が良くないんですが?』

『まぁまぁ。すぐ帰ればいいだろ?たまには付き合えよ』



───あんな事、言わなきゃ良かった。
連れ出さなけりゃ良かった。
汚れやすい日だって、分かってたのに…



『わぁ…』

『良い眺めだろ?早く見せたかったんだ』

『ふふ、そういえばヒノエは昔から良憬を見つけるのが得意でしたね』

『…まぁね。でもそろそろ帰んないとな。あんたの体壊したら本末転倒だし』



元気付けたかったんだ。
最近戦続きで沈んでたから…
それなのに。



『ヒノエっ…危ない!!!』

『わっ!?』



怨霊に襲われて、油断してた俺をあいつが庇った。
その後何とか追い払って、帰ってきて。

いつも通りだった。
今朝、弁慶が起きるまでは。



『ん…』

『…起きた?弁慶。おはよう』

『おはようございます。……ヒノエ…何処ですか?』

『───はぁ?遂に目もイッたか、年だな』

『こんなに暗いのに分かりませんよ。皆が君みたいに夜目が利く訳ではないんですよ』

『何、それ。何の冗談?今何刻だと思ってんだよ……もう朝五つ(午前八時頃)だぜ?』

『ヒノエこそ何を言ってるんですか、何も見えない位真っ暗なのに朝五つ刻なんて…』

『!!!!』



弁慶は視力を失っていた。
俺は他の皆を呼び、この事実を教えた。
白龍が言うには、怨霊の汚れに当たったらしい。
自然に治るかは分からない、と言われ俺が動揺したのは言うまでもないだろう。





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