学園果実.
□:視聴覚室.
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「あ、あ」
『多分視聴覚室だよね、まだ開いてるかなあ』
パタパタと音をたてて、映像の中のDさんは廊下を走り出しました。
渡り廊下を走って、階段をのぼって、廊下を早歩きで歩いて。
映像の中のDさんは視聴覚室にたどりつくと、自分が座っていた机に駆け寄りました。
『よかった、やっぱりここに教科書あったんだ』
プツッ、と突然映写機は映像を流すのをやめて、スクリーンは真っ白になりました。
今まで起こったことをふり返って、Dさんはカタカタと小刻みに身体を震わせていました。
「誰なの、誰が私を見ていたのよ」
誰が自分を撮影したのかを考えただけで、Dさんは吐き気がしました。
「出てきなさいよ!!ここにいるんでしょう!!」
撮影は視聴覚室で終わっているのだから、きっとまだこの部屋にいるに違いありません。
Dさんは、怒ったように声を張り上げました。
「いい加減にして!!早く姿を見せなさい!!」
ズカズカと歩いて、Dさんは映写機の前をスッと横切りました。
真っ白なスクリーンに2つの人影が映って、そして静かに消えました。
「………」
2つの、人影?
ハッとして振り向くと、Dさんはみるみる顔色が悪くなりました。
「ひっ、いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
Dさんの背後には、すき間もないぐらい近くで見知らぬ女子生徒がユラリと立っていました。
ニタニタと気味の悪い笑みを浮かべて、女子生徒はDさんの首に腕を伸ばしました。
「うが、あぐぅ」
スクリーンには、女子生徒がDさんの首を絞める影絵が映っていました。
女子生徒はDさんの首を絞めたまま押し倒して、映写機の光が届かない場所にいきました。
影絵のない真っ白なスクリーンから、Dさんの苦しそうなうめき声だけが聞こえてきました。
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