学園果実.

□:美術室.
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「ひっ、いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

Cさんの背後に立っていたのは、恐ろしい顔をした女子生徒でした。

真っ白な顔は赤い切り傷や青く腫れた痣がちりばめられていて、見ているだけで吐き気がしそうでした。

「ぐあっ」

ガッ、と女子生徒はCさんの頭を掴んで扉のガラスに押しつけました。

酸素に触れて黒く粉々になった血が、Cさんの頬にパラパラ落ちました。

「がっ、があ」

ミシミシ、ミシミシと女子生徒がCさんの頭を扉に押しつける力が強くなっていきました。

女子生徒の血色の悪い紫色の手は力を緩めることなく、Cさんの頭に圧力をかけています。

「う、あ」

頭に直接かかる重力に、Cさんの意識がだんだん遠のいてきました。

絵の具をこぼしたような色とりどりの女子生徒の顔が、歪んで見えます。

(死にたくない、もう少しで絵が完成するのに)

今回の作品に強い執着を持っていたCさんは、自分の命より絵のことばかり考えていました。

(こんな醜い女のせいで私の絵が完成しないなんてことになったら、死んでも死にきれない!!)

カッ、とCさんの目が大きく開かれました。

「うわ、うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「!!」

Cさんは女子生徒の木のように固い手を掴んで、無理やり自分の顔から剥がしました。

抵抗されるとは思っていなかったのか、女子生徒は呆然としていました。

「許さない!!私の邪魔をするヤツは消えろ!!」
「!!」

Cさんの焦点を失った瞳と絶対零度の声に、女子生徒は踵を返しました。

「逃がすかぁあ!!」

さっき死にかけた人間とは思えない速さで、Cさんは女子生徒を全力疾走で追いかけました。

女子生徒が逃げた先は、美術準備室でした。

「どこにいった!!」

美術準備室は、卒業生が制作した彫刻や色がさめたポスターなどが乱雑に置いてありました。

床に散らばった鉛筆画や画用紙を道しるべに、Cさんは女子生徒を追いかけました。

「!!これは、」

女子生徒を追いかけた先にあったものを見て、Cさんは思わず立ち止まりました。

そこにあったものは、壁にかけられた一枚の自画像でした。

額に縁どられた自画像はあの女子生徒と同じ顔をしていて、年月による風化で色あせていました。

「お前か!!さっきの女はお前なんだなあ!!」

Cさんは一人で言って、近くにある棚の引き出しをガラッと開けました。

Cさんが引き出しから取り出した物は、刃が鋭くとがった彫刻刀でした。

「私の邪魔をするな!!」

そう言って、Cさんは両手で持った彫刻刀を振り上げました。

ガスッ、と彫刻刀の刃はガラスも紙も壁も貫通して刺さりました。

じんわりと、刺した所から絵の具のように赤い液体が広がりました。

「絶対に許さない!!許してなるものか!!」

ガス、ガス、ガス、ガス

ガラスにヒビが入り、紙が穴だらけになり、赤い液体で紙がクシャクシャになってもCさんは彫刻刀を刺し続けました。

見回りの用務員さんがCさんをとめるまで、Cさんは壁の絵を刺し続けていました。


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