人形家族.

□:小話置場.
2ページ/22ページ

.
これは、僕が高校1年生の時に知人のカミナリから聞いたお話です。


『:球体関節人形.』


カミナリの知り合いに、0くんという男の子がいました。

ある日、0くんは近所に住む人形師から試作品として不思議な人形をもらいました。

「最近の人形ってすげぇんだな、腕とか足とか曲げられるんだ」
「人間みたいだろ、色々なポーズが出来るから動かしてみな」
「おぅ」

0くんがもらった不思議な人形は、赤いチェック柄のワンピースを着た愛らしい少女の球体関節人形でした。

肘や膝に関節部分の球体がつけられていて、指で撫でるとツルリとした冷たい感触がしました。

「でももらってもいいのかよ、これ結構高いんじゃねえのか」
「試作品だからそんなに気にすんな、ありがたくもらっておけ」
「でも俺男だし」
「いいからいいから」

0くんは球体関節人形をもらって、家に帰ることにしました。

「ただいまー」
「お帰り0くん、お邪魔しているよ」
「叔父さん、また家に来ていたのか」
「ははは」

家に帰ると、0くんの叔父さんが玄関まで出迎えてくれました。

穏やかな笑顔を浮かべた叔父さんに、0くんもニコリとほほ笑みました。

「なあ叔父さん、叔父さんって確か人形が好きなお子さんがいたよな」
「え?ああ」
「それじゃあ、ちょうどよかったぜ」

はい、と0くんは叔父さんに球体関節人形を手渡しました。

「これお子さんにやってくれよ、俺いらないし」
「いいのかい?」
「ああ、人形も俺なんかよりは可愛い子がいいだろうしさ」
「はは」

叔父さんは、0くんからもらった球体関節人形を優しく抱き上げました。

その手つきはまるで、小さな赤ん坊を抱いているようでした。

「ありがとう0くん、後で何かお礼するよ」
「じゃあまた家に遊びに行っていいか?おばさんのケーキが食べたい」
「もちろん」

叔父さんは、コクンとうなずきました……。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ