人形家族.
□:土人形.
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「う、うぅ」
その日の夜、Qくんがベッドで寝ていると妙な臭いがしました。
(何か、泥臭い)
Qくんが目をうっすらと開くと、暗闇の中でぼんやりと人影が浮かんでいました。
(だれ、アネさん?)
その人影は大きな胸を露にしていて、お腹がポッコリ膨らんでいました。
人影はしばらくQくんを見下ろしていると、静かに部屋のドアに向かって歩いていきました。
「!!」
スッ、と人影はドアを開けることなく消えてしまいました。
まさか、とQくんは思わずベッドから起き上がりました。
(今の、幽霊?)
驚きと恐怖で冷たくなった身体をQくんが抱きしめた、その時でした。
「わあああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「!!」
隣の部屋から、天井を突き破るようなかん高い叫び声が聞こえました。
「アネさん!!」
言い様のない不安を胸に抱いて、Qくんは裸足で部屋を出ました。
かすかに開いた扉に手をかけると、Qくんは見てはいけないものを見てしまいました。
「あ、ねさん」
「ぐ、ぅ」
部屋の真ん中に、お姉さんが仰向けになって倒れていました。
お姉さんはお腹から下半身まで真っ赤に染まっていて、ピクピクと痙攣していました。
「アネさん!!どうし」
ヒッ、とそれを見た瞬間Qくんは思わず息を飲みました。
「何で、お腹」
夕方に見た時は確かにお姉さんのお腹は膨らんでいたのに、今は完全にヘコんでいました。
無意識にQくんがお姉さんのお腹に手を伸ばそうとしたその時、Qくんはまたあの泥の臭いを嗅ぎました。
「つっ!!」
Qくんが振り向くと、そこには誰もいませんでした。
誰もいませんでしたが、床にはあの土人形が横になっていました。
(まさか、土人形が?)
Qくんが土人形を掴み上げると、パキリと簡単に壊れてしまいました。
赤茶色の破片がパラパラと割れて床に落ちると、Qくんの手にある物だけが残りました。
手の上に乗った小さなそれは、希望ではありませんでした。
「あ、あ」
一目では赤茶色の破片にしか見えないそれは、へその緒がついた胎児の姿を型どっていました。
胎児は、原型をとどめているのが不思議なくらいギザギザに切り刻まれていました……。
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