人形家族.
□:おきあがりこぼし.
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その日の夜、Gくんはあまり眠れずにいました。
(アイツ、やっぱり怒ってるんだろうな)
Gくんは、弟さんに強く当たったことは一度もありませんでした。
今までずっと甘やかしてきたので、弟さんは恐らく傷ついたでしょう。
(あやまる、か)
意を決して、Gくんは弟さんの部屋に行くことにしました。
コンコン、と扉を叩くと乾いた音が鳴りました。
「おい、いるか?」
「………」
無視かよ、とGくんは弟さんに許可を得ることなく扉を開きました。
「あれ、いないのか」
見慣れた部屋は相変わらず殺風景で、中には誰もいませんでした。
「何だよ、まだ1階にいるのか?」
夜更かししやがって、とGくんは部屋を出て階段に向かいました。
手すりをつかんで、一歩足をおろした時でした。
「あにぃ」
「!!」
トン、と軽い音をたててGくんは背中を押されました。
手すりから手が離れ、踏み場から足が離れたGくんはそのまま前のめりになりました。
「あ、」
ドサ、ガタンガタン
身を支えることが出来なかったGくんは、段差に体をぶつけながら階段を落ちていきました。
冷たい床が背中に当たるのを感じる頃には、Gくんの意識は朦朧としていました。
「あにぃ、身体は痛くないですかぁ?」
ニヤニヤしながら階段を降りてきたのは、Gくんの弟さんでした。
弟さんは、身動きのとれないGくんに覆いかぶさりました。
「あ、ぐ」
「ごめんなさいあにぃ、僕に甘えられるの疲れちゃってたんですねぇ」
弟さんの声は優しく、まるで子供にするような甘さを含んでいました。
「いっぱい考えて僕はわかりましたぁ、あにぃは甘えたいんですねぇ」
「は、」
違うと否定しようとしましたが、Gくんは首を振ることも声を出すことも出来ませんでした。
弟さんは、動けないGくんを抱きしめながら言いました。
「でもあにぃって強がりで照れ屋さんだからそんなこと恥ずかしくて言えないですよねぇ?だから僕があにぃに理由を作ってあげましたぁ」
「り、」
まさかその理由が、自分を階段から落とすことなのだろうか。
Gくんが意味がわからないでいると、弟さんは言いました。
「あにぃがお人形になればいいんですよぉ、そぉすればあにぃは僕に甘えられるんですぅ」
「は、あ」
(意味がわからない)
ス、と弟さんはGくんの両目を手で覆いました。
それを合図に、Gくんは意識を失いました……。
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