人形家族.

□:やじろべえ.
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その日の夜、Eくんはベッドに眠る前にユラユラとやじろべえを揺らして遊んでいました。

(お姉ちゃん、何か悩みがあったのかな)

夕方のお姉さんの悲しげな表情に、Eくんは胸がしめつけられました。

(相談にのった方がいいのかな、でも勉強とかだとわからないし……)

コンコン、とEくんが頭を悩ませていると扉を叩く音が聞こえました。

「E、起きてるー?」
「お姉ちゃん?」

扉を開いたのは、パジャマ姿のお姉さんでした。

お姉さんは疲れた顔をしていて、いつもの快活さが薄れていました。

「お姉ちゃん、こんな遅くにどーしたの?」
「ちょっとねー」

スタスタとマイペースに歩いて、お姉さんはEくんがいるベッドに腰を下ろしました。

Eくんの頬を撫でて、お姉さんは言いました。

「ねえE、私ね、ずっとEに黙っていたことがあるんだー」
「えっ、何?」

戸惑うEくんに、お姉さんは小さく言いました。

「私ずっと前からEが好きだったんだー、もちろん弟としてじゃなくて男の子としてねー」
「す、き?」
「そう」

コクリ、とお姉さんは軽くうなずきました。

「告白するかしないか迷ったんだけど、やっぱり言うことにしたんだー。Eには姉としてじゃなくて女の子として見てもらいたかったからー」
「う、そ」

Eくんには、目の前にいるお姉さんが偽者のように見えました。

実の弟を男の子として見ているなんて、常識では考えられないからです。

「僕は、お姉ちゃんのことを女の子として見たことないよ?そもそも実の姉弟で恋愛するのが間違いじゃ」
「やっぱりー?」

いつもと変わらない口調で言って、お姉さんは言いました。

「やっぱりEは世間体をとるかー、普通はそうだよねー」

残念そうな口調で言い、お姉さんは自然な動きでEくんの首をなぞりました。

「残念だよ」
「!!」

お姉さんの間延びしていない冷たい口調に恐怖を感じると同時に、Eくんはお姉さんに首を絞められてしまいました。

ギリリ、とお姉さんは喉元に当てた指に本気で力を入れていました。

「あ、ぐ」
「結局脅迫するしか道はないのかなー」

いつもの口調に戻っているはずなのに、内容は残酷なものでした。

「ねえE、私を好きになってよー。じゃないと殺しちゃうよー」
「ぐ、ぐぁ」
「ウンッてうなずくだけでいいんだよー、命は大事にしなきゃー」
「あ、あああ」

Eくんの意識はだんだん遠のいていきました。

(でもその前に、お姉さんに返事をしなきゃ)

Eくんは首を動かすと、そのまま開いていた目を静かに閉じました……。


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