人形家族.

□:わら人形.
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「う、う」

その日の夜、Dくんがベッドに横になっていると何故か身体中がズキズキと痛みました。

カン、カンと金属的な音もどこからか聞こえて、頭が狂いそうでした。

(俺は、どうしたんだ)

刺すような痛みにもかん高い音にも耐えきれずに汗や涙を流していると、耳元で女の子の声が聞こえました。

「ふふふー、お兄ちゃまかわいちょう」
「つっ!!」

その特徴的な声に、Dくんは思わず目を大きく開きました。

視界には、妹さんの顔が大きく映っていました。

「おま、え」
「おはようございまちゅお兄ちゃま」

おはようのちゅー、と妹さんはDくんの頬に口づけをしました。

妹さんの唇の体温に、Dくんは夢ではないと気づきました。

「お前何だよ、どうして俺の部屋にいるんだよ」
「奥ちゃんが旦那ちゃまのお部屋にいくことは当たり前でちゅよ、もちろん持ち物チェックも」
「持ち物チェック?」

ス、と妹さんはDくんに覆いかぶさったまま部屋の壁を指差しました。

暗闇にぼんやりと浮かんだそれは、無数の釘が深々と刺さったわら人形でした。

「お前、また俺のバッグを勝手に」
「あれ、誰にもらったんでちゅか?」

ヒヤリとした言葉に、Dくんは言い様のない恐怖を覚えました。

「誰って、知り合いの人形師さんだよ」
「うちょだ!!」

パン、と妹さんはDくんの頬を叩きました。

妹さんは軽やかにDくんの身体からおりると、わら人形がはりつけられている壁まで走りました。

その手に握られた金づちを見て、Dくんは血の気が引きました。

「待て、やめろ!!」
「本当は女の子からもらったくちぇに!!うちょつくなんて許ちゃない!!」

カ、と妹さんは殴るように釘を打ちつけました。

「あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

全身に走る痛みにこらえきれずに、Dくんは喉から叫びました。

あまりの痛みに、気を失うことも出来ません。

「ひっ、あ」
「お兄ちゃまはあたちだけの旦那ちゃまなんだから!!お兄ちゃまはあたち以外の女の子から物をもらっちゃ駄目なのぉ!!」

身勝手な言い分に怒ることも悲しむことも出来ずに、Dくんはただ痛みに喘いでいました。

(これは本当に、ままごとの延長なのか?)

もしかして妹は、わら人形を使うぐらい俺を憎んでいるんじゃないか?

「お兄ちゃまなんて大嫌いなんだからぁ!!嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い!!」
「はは、」
「………」

ピタ、とDくんの乾いた笑い声を聞いて妹さんは止まりました。

Dくんは、妹さんに小さく笑いかけました。

「俺はお前のこと、嫌いじゃなかったけどな」
「!!」

カラン、と妹さんは金づちを落としてDくんに駆け寄りました。

妹さんがDくんにすがりつく時には、Dくんは息絶えていました……。


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