不幸携帯.

□:電話.
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その日の夜、Bさんは家に帰るとbさんに電話をかけました。

しかし、何度かけても聞こえてくる音は同じものばかりでした。

『ただいま留守にしております、合図の音がなりましたら3分以内に伝言をどうぞ』
「駄目かあ」

ピ、と電源ボタンを押してBさんは携帯電話を枕元に置きました。

ベッドに寝転がって、Bさんは険しい顔をして天井を見ました。

(電話をかけてきたってことは私に何か用事があるんだよね、bちゃんどうしたのかな)

うーん、うーんとBさんが考えていると不意に携帯電話から高い電子音が聞こえました。

「あ、bちゃんかな」

Bさんはベッドから身体を起こして、携帯電話を開きました。

画面には、bさんの名前がありました。

「はいもしもし」
「………」
「もしもし」
「………」

やはり、bさんの声は聞こえませんでした。

はあ、はあと荒い息だけが聞こえます。

「ねえbちゃん、聞こえたら聞いてね。私bちゃんの声が聞こえないの」
「………」
「だからね、用事があるならメールとか直接会ってお話してくれない?」
「………」
「ええと、やっぱり聞こえないかな?じゃあ私今からメール出すから」

ガタン、と不意に何かがぶつかるような鈍い音が聞こえました。

ビクリ、とBさんの身体が強張りました。

「え、なに」

ズル、ズルと何か重いものをひきずるような音が聞こえました。

それは、すぐ近くで聞こえていました。

「嘘、どこから」

辺りを見渡しても、部屋には怪しいものは見当たりませんでした。

窓の外も暗闇が広がるだけで、何も変わったことはありませんでした。

「廊下、かな」

Bさんは、ベッドから降りて扉がある方向に向かおうとしました。

ゆっくりと、足を踏み出そうとした時でした。

「えっ?」

ガシッ、と引き止めるように足首に何かが絡みつきました。

絡みつくそれを見て、Bさんは自分の目を疑いました。

「ひっ、いやああああああああああああ!!」

Bさんの足首に絡みついたそれは、手でした。

手はベッドの下から伸びていて、離さないと言わんばかりにBさんの足首を握っていました。

「離して!!いやっ!!」
「………」

ズル、ズルと手はBさんの足首を掴んだままベッドの下から這って出てきました。

恐怖のあまり座りこんでしまったBさんは、その手の正体を見て息を止めました。

「え、bちゃん?」
「………」

ベッドの下から這い出てきたのは、同級生のbさんでした。

顔を強張らせて泣きそうな顔をしていましたが、確かにbさんでした。

「どうして、bちゃんがこんな所に」
「………」

bさんはベッドの下から這い出ると、驚いているBさんの両肩を掴んで床に押し倒しました。

突然のbさんの行動に、Bさんは恐怖よりも驚きを隠せませんでした。

「bちゃん?」
「………」

bさんは、顔を真っ赤にしてBさんに顔を近づけていきました。

「え?」

ちゅ、とbさんはBさんの唇にそっと口づけをしました。

Bさんは、目を丸くしたまま動くことが出来ませんでした。

「へ?え?」
「………」

長い口づけを終えて、bさんはBさんから唇を静かに離しました。

それと同時に、bさんはゆっくりと透明になって姿を消していました。

「………」

部屋の真ん中には、顔を真っ赤にしたBさんが残されました。

今まで起きたことは夢だったのだろうか、と思うくらいBさんにとって信じられないことでした。

「何だったの」

ムクリ、とBさんが起き上がるとあることに気がつきました。

「あっ」

携帯電話が、緑色の光を点滅させていました。

慌ててBさんが携帯電話の画面を見ると、電話ではなく1通のメールが届いていました。

「bちゃん?」

送信者の欄には、bさんの名前がありました。

メールを見て、Bさんは驚きました。

『ずっと前からBちゃんが好きでした、私とお付き合いしてください』

Bさんは、言葉を無くしてぼんやりとメールを見つめていました……。


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