学園果実.
□:学校坂.
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これは、私が高校2年生の時に友人のミカンさんから聞いたお話です。
『:学校坂.』
ミカンさんと私の共通の知り合いに、Zさんという女の子がいました。
Zさんはいつも、斜面が急な学校坂を走って登下校していました。
ある日の放課後、Zさんはいつものようにスキップをしながら学校坂をくだっていました。
(いち、に、さん)
数を数えながら、Zさんは学校坂を転ぶことなくおりていきました。
何人も生徒を追い越していくZさんはまるで、小さな子供のようでした。
(し、ご、ろく)
追い越す生徒がいなくなると、Zさんはカーブを描きながら走りました。
(なな、はち……)
ピタ、と不意にZさんは足をとめました。
キョロキョロと辺りを見回して、コテンと首をかしげました。
「真っ暗、だ」
気がつくと、Zさんの周囲は静かな闇に包まれていました。
坂に沿って並ぶ電灯は電気が消えていて、学校坂を囲む木々は空を覆って光を遮っていました。
前も後ろも暗く、Zさんは怖くなりました。
(走り続けていれば、坂を降りられるよね)
恐怖を振り払うように、Zさんは先ほどより早く走りました。
はあ、はあと自分の息の音だけが聞こえました。
(こわい、こわいよ)
怖いのは目に見えない前でしょうか、それとも戻れない後ろでしょうか。
Zさんは、無我夢中で走り続けていました。
(息が、切れる)
体力に自信のあるZさんもさすがに、足が疲れてきました。
もう駄目だ、とZさんが立ち止まろうとしたまさにその時でした。
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