学園果実.

□:被服室.
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これは、私が高校2年生の時に先輩のカリンさんから聞いたお話です。


『第10話:被服室.』


私がこの女子高に入学する前、カリンさんの上級生にJさんという女の子がいました。

Jさんはおしゃれに気を使う人で、毎月女性誌を買って流行をチェックしていました。

そんなある日、Jさんは被服室にある裁縫道具を借りにきました。

制服の上に着るカーディガンのボタンがほつれてしまったのです。

(はあ、ついてないな)

たたんだカーディガンを腕にかかえて、Jさんは被服室に行きました。

職員室から借りた鍵を鍵穴に入れたその時です。

「あら?」

カタカタ、カタカタと鍵が閉まっているはずの被服室から、ミシンの音が聞こえてきたのです。

誰かいるのだろうか、と考えようとしてJさんは首を振りました。

(鍵がかかっているんだから、中に人がいるわけないじゃない)

気のせいだと思い、Jさんは鍵を回しました。

扉を開けると、そこには冷たい空気が詰まった空間が広がっていました。

(ほら、誰もいない)

ほう、と大きく息を吐いてJさんは被服室の中に入りました。

「えーと、確か裁縫箱はあっちの棚だよね」

Jさんは壁側に立つ棚の蓋を開けて、コソコソと裁縫道具を探しました。

指先に当たるプラスチックの箱を見つけ、Jさんは取り出しました。

(あ、あった!!)

早速縫おう、とJさんは蓋を開けました。

Jさんの顔色が、一気に青ざめました。


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