学園果実.

□:生物室.
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これは、私が高校2年生の時に先輩のカリンさんから聞いたお話です。


『:生物室.』


カリンさんのクラスに、Fさんという女の子がいました。

Fさんは昔から男の人が大好きで、週単位で恋人を変えては恋を楽しんでいました。

ある日の午後、Fさんは駆け足で生物室に向かっていました。

(どうしよう、間に合わないかもしれない)

Fさんは携帯で他校の男友だちとおしゃべりをしていたので、授業に遅刻しそうでした。

キーンコーン、と無情にも予鈴が鳴り響きます。

「遅れてすみません!!」

ガラガラガラ、と引き戸の扉を開けるとFさんは目を丸くしました。

「あれ、誰もいない」

机も教壇も、生物室のどこにも生徒や先生の姿が見当たりませんでした。

ひんやりとした冷たい空気だけが、生物室を包んでいます。

「みんな、どこに行ったっていうのよ」

そこにつっ立っているワケにもいかなくて、Fさんは生物室の中に足を進めました。

(もしかして教室が変わったのかな、誰かに連絡しなくちゃ)

席に座ると、Fさんは制服のポケットから携帯電話を取りました。

授業中でも携帯電話をいじっているようなクラスの友人を選び、Fさんはメールを送信しました。

(よし、あとは誰か教えてくれるのを待つだけ)

ふう、と息を吐いてFさんは机に伏せました。

男友だちや今週の彼氏とのメールに飽きたので、Fさんは辺りをぼんやりと見回していました。

(こう見ると、生物室ってホラーだよね)

棚に陳列した臓器や動物のホルマリン漬け、タヌキやワシなどの剥製。

見るだけで鳥肌が立つような不気味さを持つものたちが、Fさんを不安にさせました。

(早く、早く誰かメールしてくれないかな)

しかし、携帯を見ても誰も連絡をくれません。

いっそ自力で場所を探そうかと考えていると、隣の準備室から物音が聞こえました。

(誰か、いるのかな)

もしかしたら先生かもしれない、とFさんは扉を開けました。

Fさんは、開けて後悔することになりました。


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