学園果実.
□:図書室.
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これは、私が高校2年生の時に同級生のイチゴさんから聞いたお話です。
『:図書室.』
昔、女子高にEさんという女の子がいました。
Eさんは昔から本が大好きで、女子高では図書委員をしていたそうです。
ある日の放課後、Eさんは図書委員の仕事でカウンターにいました。
図書の貸し出しや返却の手続きをしたり、パソコンで新着図書のチェックをしたりと、いつもと同じ仕事をしていました。
(よし、そろそろ棚入れしようかな)
パソコンを打ち終えて、Eさんは返却された本を元の棚に戻す作業にうつりました。
本の背表紙に貼られたラベルの数字を確認して、その数字の棚に本を戻す単調な作業でしたが、Eさんは嫌いではありませんでした。
(ええと、次の本は)
本を手にとると、Eさんの目が丸くなりました。
「え、この本何もない」
その本は黒い背表紙のページが厚い本で、題名も作者も何も書いていませんでした。
整理する際に必要なラベルも貼られていなくて、貸し出しするための図書カードも入っていませんでした。
(生徒の本がまぎれこんだのかしら)
パラ、とEさんは興味でページを開きました。
「………」
その本を読むEさんの顔色は、真っ青でした。
目を見開いたり、ヒッと声をあげたりしているのに、Eさんは決して読むのをやめようとはしませんでした。
最後まで読み終えたEさんは、立ったままガクガクと震えていました。
「ど、どうしよう」
とじられた本を見下ろしながら、Eさんがつぶやいたまさにその時です。
「え、」
カタカタカタカタ、と手の中の本が小刻みに動き始めました。
それに共鳴するように、Eさんを囲む本たちも音を鳴らしました。
「!!」
それは、一瞬でした。
地震が起きたワケでもないのに、Eさんの前の本棚と後ろの本棚がEさんに倒れてきたのです。
「あっ、」
棚がEさんを襲い、バサとたくさんの本が床に散らばりました。
本棚の下じきになったEさんは、本にうもれたまま帰らぬ人になってしまいました。
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