学園果実.

□:音楽室.
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これは、私が高校2年生の時に先輩のカリンさんから聞いたお話です。


『音楽室.』


私が高校に入学する前、カリンさんの上級生にBさんという落ち着いた女の子がいました。

Bさんは合唱部に所属していて、その歌声は学年で一番だったそうです。

ある日、授業を終えてBさんが帰ろうとしていると、音楽室からかすかにピアノの演奏曲が聞こえてきました。

(まあ、なんて素敵な曲なのでしょう)

Bさんは、曲の美しさと技術の高さに大きく感動しました。

(一体、誰が弾いているのでしょうか)

演奏している人がどんな人なのか目にしたくて、Bさんは駆け足で音楽室に向かいました。

閉じられた音楽室の扉を開くと、Bさんは大きく目を見開きました。

「あら?」

ピアノの曲は確かに流れているのに、音楽室には誰もいませんでした。

レコーダーにCDかカセットが入っているのだろうかと近づいてみましたが、電源どころかコンセントも入っていない状態でした。

(じゃあ、これは一体どこから流れているの?)

キョロキョロと辺りを見回して、Bさんは音源を探しました。

コンポのスピーカーからでも、テレビでも、吹奏楽部が置いていった楽器からでもありません。

「あ、」

音源が強い場所を探っていると、Bさんは大きな黒いグランドピアノにたどり着きました。

弾き手がいないのにピアノが鳴るわけがない、と別の場所を探そうとした時でした。

「!!」

それを見たBさんは、言葉をなくしました。


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