学園果実.

□:屋上.
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これは、私が高校2年生の時に同級生のイチゴさんから聞いたお話です。


『屋上.』


私とイチゴさんが通う女子高に、Aさんという女の子がいました。

大人しいAさんは友人と呼べる友人がいなくて、休み時間や昼休みはいつも屋上にいたそうです。

同級生や先生は優しくしてくれるのに上手に話せない自分を、Aさんは責め続けていました。

そんなある日、いつものようにAさんが屋上に行くと、1人の女子生徒がいました。

屋上に自分以外の誰かがいるなんて初めてで、Aさんは戸惑いました。

(あの子、どうしてここにいるんだろう)

もしかしたら自分と同じで1人ぼっちなのかも、とAさんは女子生徒に視線を向けました。

「!!」

女子生徒の行動に、Aさんは目を見開きました。

女子生徒は屋上を囲うフェンスを両手で掴むと、網目に足をかけて上り始めました。

慣れた様子でフェンスを上り終えると、女子生徒はそのまま空中に身を投げ出しました。

(えっ!!)

女子生徒が先ほどまでいた場所を見て、Aさんは硬直してしまいました。

今何が起こったのかを理解するのに、Aさんは時間を費やしました。

(あの子、落ちた?)

自分が女子生徒の自殺を目撃したとわかると、Aさんは言い様のない寒気を覚えました。

(そんなの、嘘だ)

信じられないのか、信じたくないのか。

Aさんは何度も何度も首を振りました。

目を閉じて繰り返し頭の中を否定しても、女子生徒が落ちる映像は消えてくれませんでした。

(今のはきっと、私の見間違いなんだ)

Aさんはさっきまで女子生徒がいた場所に走り、そこから地面を見下ろしました。


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