人形家族.

□:骨格標本.
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これは、僕が高校1年生の時に2つ年下の妹であるキリちゃんから聞いたお話です。


『:骨格標本.』


キリちゃんの知り合いの知り合いに、Xくんという男の子がいました。

ある日、Xくんは近所に住む人形師から試作品として不思議な人形をもらいました。

「ほ、ほね?」
「骨だな」
「骨格標本って、人形じゃないと思うんだけど」
「いや、人の形をしているんだから人形だ」
「もう何でもありだね人形師さん」

Xくんがもらった不思議な人形は、手のひらに収まるくらいの大きさの骨格標本でした。

Xくんは、骨格標本の頭蓋骨を持ってユラユラと揺らしました。

「これ、目とかピカーンって光らないの?」
「光るわけないだろ」
「何だつまんない、じゃあ踊ったりする?」
「お前は骨格標本に何を期待しているんだ」

骨格標本はXくんが言うような機能を持っていませんでしたが、Xくんは骨格標本を持ち帰ることにしました。

「ただいまー」
「あ、にいちゃ!!」

Xくんを出迎えてくれたのは、Xくんの幼い妹さんでした。

「ただいま、今日もいい子にしていたか?」
「うん!!」

Xくんが頭を撫でると、妹さんは嬉しそうに笑いました。

妹さんを抱き上げると、Xくんは静かに玄関に上がりました。

「にいちゃ、にいちゃ」
「何?」
「おばけ?」

妹さんは、Xくんのポケットから突き出た骨格標本を指差しました。

「これはお化けじゃなくて、骸骨だよ」
「ガイコツ?」
「そう」

じい、と妹さんが見つめているのでXくんは骨格標本を手渡しました。

「ガイコツ、ガイコツ」
「あはは、いじりすぎて折らないようにな」
「ガイコツ、」

ポキッ。

Xくんの注意は、妹さんに届きませんでした。

「!!にいちゃ!!」
「あー、遅かったか」

妹さんの右手には右腕のない骨格標本が、左手にはしっかりと右腕が握られていました。

「にいちゃ、こわれた」
「壊したんだろ」
「こわ、こわれた」

うる、と瞳を潤ませる妹さんにXくんはため息をつきました。

(後で、接着剤か何かでつけて置くか)

ポン、ポンとXくんは泣きじゃくる妹さんの背中を優しく撫でました。


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