人形家族.

□:着せ替え人形.
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これは、僕が高校1年生の時に2つ年下の妹であるキリちゃんから聞いたお話です。


『:着せ替え人形.』


キリちゃんの同級生に、Pくんという男の子がいました。

ある日、Pくんは近所に住む人形師から試作品として不思議な人形をもらいました。

「まさか、人形師さんがロリコンだったとは思わなかった」
「バカ言うな、それだったら着せ替え人形作っているヤツはみんなロリコンになるだろうが」
「はは、ゴメンゴメン」

Pくんがもらった不思議な人形は、青いワンピースを着た美しい着せ替え人形でした。

人形師さんからもらったミニチュアのクローゼットを開くと、色とりどりのドレスや帽子、靴が入っていました。

「それで、これをどうしろと言うの」
「遊べ」
「無理」

ポス、とPくんは着せ替え人形とミニチュアのクローゼットを人形師に返しました。

「何だよ、タダなんだからもらっておけばいいじゃないか」
「だっていらないし」
「じゃあ誰かにあげてもいいから、とにかくもらってくれ」

頼む、と手を合わせる人形師を見て、Pくんはため息をつきました。

「要するに、処分に困ったんだね」
「うるせっ」

Pくんは、渋々といった様子で人形とクローゼットを抱えました。

「わりぃな」
「本当にね」

最後まで皮肉って、Pくんは家に帰りました。

もちろん、人形とクローゼットは途中にあったゴミ捨て場にポイ捨てしていきました。

「ただいま」
「………」

玄関にいたのは、長い金髪と青い目の美しい少女でした。

少女は肌よりも白いワンピースを着ていて、ただぼんやりとPくんを見つめていました。

「ああ、兄の帰りを待っていてくれたのかい?」
「………」

コクンとうなずいたその女の子は、Pくんの妹さんでした。

妹さんの頭を撫でると、Pくんはとろけるような目を向けました。

「お前は本当に美しい、まるで本物の人形のようじゃないか」
「………」
「はは、首を振らなくてもちゃーんとわかっているよ。お前が人間であることぐらい」

Pくんは妹さんの長い金髪を指に絡めると、チュッと騎士のように口づけをしました。

その口づけに、妹さんは嫌がることも喜ぶこともしませんでした。

「ふふ、でも君はまだまだ綺麗になれる。もっと可愛くなりたいかい?」
「………」

うなずく妹さんを満足そうに見下ろして、Pくんは言いました。

「じゃあまた僕の部屋においで、お父さんとお母さんにバレないように」
「………」

コクリ、と妹さんは小さくうなずきました。

「いい子だ」

Pくんは、嬉しそうに妹さんの額に口づけを落としました。


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