人形家族.

□:ロボット.
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これは、僕が高校1年生の時に1つ年上の兄であるアメ兄ちゃんから聞いたお話です。


『:ロボット.』


アメ兄ちゃんの知り合いに、Nくんという男の子がいました。

ある日、Nくんは近所に住む人形師から試作品として不思議な人形をもらいました。

「すごい、人形師さんはロボットも作れるんだ」
「ロボットも、人形の一種だからな」

Nくんがもらった不思議な人形は、機械で出来た犬型のロボットでした。

コンセントをはめて充電するタイプで、スイッチを押すと足を動かしてワンワンと鳴きました。

「充電出来なかったら腹にある蓋を開けて乾電池を入れてくれ、それでも動くからな」
「どうもありがとう人形師さん、大切にするね」
「そうしてくれ」

本物の犬を抱くようにロボットを抱いて、Nくんは家へと帰っていきました。

「ただいまおにぃ」
「ああ、お帰りN」

玄関にいたのは、Nくんのお兄さんでした。

お兄さんはNくんの抱えている犬のロボットを見た途端、急に顔をしかめました。

「何だそれ、誰かからもらったのか?」
「あ、うん。人形師さんからもらったんだ」
「へえ」

お兄さんは顎に手をやって考えると、ニヤリと笑いました。

「N、これくれよ」
「え?」
「どーせタダでもらったんだろ、早く渡せ」
「うわ!!」

バッ、と無理やり犬のロボットを奪われてNくんは目を潤ませました。

「おにぃ返して、僕がもらったんだから」
「ああ?まさかお前俺に逆らうのかよ」
「!!」

お兄さんの瞳を見て、Nくんは体を強張らせてしまいました。

そんなNくんを見て、お兄さんはニンマリと笑いました。

「逆らったらお前どうなるんだろうな?顔が真っ赤に腫れたり真っ青なあざが出来たりするかもしんねえな」
「ひ、ひい」
「血が出たり骨が折れたりするかもな、まあ別に俺はいいんだけどよ」
「!!」

ドサッ、と心よりも体の方が早く恐怖への反応を示しました。

ガクガクと震えて立てなくなってしまったNくんを見下ろして、お兄さんは偉そうに言いました。

「忘れんなよN、お前の物は俺の物なんだから」
「………」

コクコク、コクコクと壊れたロボットのようにNくんはただ繰り返しうなずきました。

それを満足そうに見て、お兄さんはNくんを置き去りにしたままその場を去りました……。


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