人形家族.
□:ぬいぐるみ.
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これは、僕が高校1年生の時に2つ年下の妹であるキリちゃんから聞いたお話です。
『:ぬいぐるみ.』
キリちゃんのクラスメイトに、Lくんという男の子がいました。
ある日、Lくんは近所に住む人形師から試作品として不思議な人形をもらいました。
「まさか、高校生にもなって男からぬいぐるみをもらう日が来るなんて思わなかったよ」
「まあそう言うなよ、でも可愛いだろ?」
Lくんがもらったのは、黒い目が可愛い灰色のクマのぬいぐるみでした。
フワフワした毛の感触はとても気持ちが良くて、いつまでも触っていたくなるほどでした。
「彼女もこんな子供っぽいヤツ好きじゃないし、もらってもなあ」
「誰かいないのか?子供っぽいヤツが好きでぬいぐるみ欲しがっているような人」
「いることはいるけど」
「じゃあぬいぐるみはその子にあげてくれ」
「え……」
Lくんは嫌そうな顔をしましたが、人形師さんはぬいぐるみを無理やり押しつけました。
仕方がないので、Lくんは渋々ぬいぐるみを家に持ち帰りました。
「ただいま、」
「Lにぃお帰りぃ」
玄関にいたのは、Lくんの妹さんでした。
いひひひひ、と妹さんはイタズラっ子がするように笑いました。
「Lにぃ帰りがいつもより遅かったねぃ、さては愛しの彼女さんとおデェトですねぃ?」
「違ぇよ馬鹿、今日は人形師さんと会ってきた」
「んん?いったい何があって人形師さんにぃ?」
「コレもらってくれって押しつけられたんだよ」
「うお、」
ポスッ、とLくんは妹さんにクマのぬいぐるみを投げました。
キョトンとして、妹さんはぬいぐるみとLくんを見比べました。
「Lにぃ、ウチにこんな愛らしいお人形を渡すなんてさては何か企んでいますねぃ?」
「別に渡したくて渡したんじゃねぇし、アイツがぬいぐるみ好きじゃねえからお前に渡したんだ」
「ははぁなるほど、ウチは2番煎じですねぃ」
「嫌な言い方するな」
冗談ですよぅ、と言って妹さんはぬいぐるみを抱きしめました。
「ありがとぅLにぃ、大切にしますぅ」
「つっ、」
妹さんが突然満面の笑みを浮かべてお礼を言ってきたので、Lくんは不覚にも心臓がドキリと鳴ってしまいました。
「お前、いきなり素直になるんじゃねえよ」
「だってぇ、Lにぃからプレゼントもらったの久しぶりなんですもぉん」
「そうだったか?」
「最後にもらったのって幼稚園の時ですよぉ、確か折り紙のチューリップをもらいましたぁ」
「お前よく覚えてるな」
「だってLにぃからもらった宝物ですもぉん」
「………」
嫌味や皮肉を言う妹さんしか知らなかったLくんは、正直戸惑いました。
(あんな適当に作った折り紙、コイツまだ持ってたのかよ)
誕生日は何かいい物を送ってやろう、とLくんは密かに思いました。
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