人形家族.
□:指人形.
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これは、僕が高校1年生の時に1つ年上の兄であるアメ兄ちゃんから聞いたお話です。
『:指人形.』
アメ兄ちゃんの先輩に、Jくんという男の子がいました。
ある日、Jくんは近所に住む人形師から試作品として不思議な人形をもらいました。
「うわー懐かしい、コレ指人形じゃんか」
「可愛いだろ」
人形師さんからもらった人形は、手袋状になった指人形でした。
指の先は人間の顔になっていて、みんなニコニコと笑っていました。
「ちなみに指人形は家族なんだ、親指が親父さんで人差し指がお袋さん、中指が兄貴で薬指が姉貴で小指が赤ん坊だ」
「何かウチの家族だな、おにぃとおねぇいるし、おかぁは妊娠してるし」
「それじゃお前の役割がないじゃねえか」
「あ、そうだな」
指人形をとても気に入ったのか、Jくんは左手にはめて家に帰りました。
「ただいまー」
「Jくんお帰り」
Jくんを出迎えてくれたのは、Jくんのお兄さんでした。
温厚なお兄さんの笑顔は優しくて、Jくんも思わず笑いました。
「ただいまおにぃ」
「今日も学校は楽しかったかい?」
「ああ」
Jくんはお兄さんと会話をしながら、リビングに向かいました。
「あれ、Jくん今日そんな可愛い手袋してた?」
「コレ人形師さんにもらったんだ、指人形の試作品なんだって」
「へえ」
Jくんがお兄さんに指人形を渡すと、お兄さんは興味深そうに見ました。
「おしいね、あと1本指があれば家族が全員そろったのに」
「だよな、中指はきっとおにぃだから俺の分だけ足りない」
「人の指が6本じゃないのが、残念だよね」
その時に浮かべたお兄さんの笑顔は、どこか切ないものでした。
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