人形家族.

□:おきあがりこぼし.
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これは、僕が高校1年生の時に1つ年下の弟であるユキくんから聞いたお話です。


『:おきあがりこぼし.』


ユキくんのクラスに、Gくんという男の子がいました。

ある日、Gくんは近所に住む人形師から試作品として不思議な人形をもらいました。

「おきあがりこぼし?ダルマじゃねえのコレ?」
「まあ同じもんだな」

おきあがりこぼしと呼ばれたその人形はダルマのような形をしていましたが、姿はピンク色の服を着た赤ちゃんを模していました。

Gくんは、不安定にユラユラと立っているおきあがりこぼしを何となく転がしてみました。

「あ、起きた」
「そりゃ、おきあがりこぼしだからな」

コロンと倒れたおきあがりこぼしはすぐに立ち上がって、元通りになりました。

「まあ悪いものでもなさそうだし、家に飾るだけでいいならもらってもいいかな」
「おう、もらっとけ」

両腕でおきあがりこぼしを抱えて、Gくんは家に帰りました。

「ただいま」
「あにぃ!!」

Gくんが家の扉を開くと同時に、小さな男の子が飛びついてきました。

背中から倒れたGくんの上に馬乗りになってニコニコ笑う男の子は、Gくんの弟さんでした。

「おい、どけよ」
「いやですぅ、あにぃ照れないで下さいぃ」
「はあ」

よいしょ、とGくんは片手で弟さんを抱えて立ち上がりました。

左手で弟さんを、右手でおきあがりこぼしを抱えたGくんはまるで母親のようでした。

「あれれぇ?あにぃがお人形を持ってるなんて珍しいですねぇ」
「ああ、人形師さんにもらったんだ」
「人形師さんですかぁ、僕はてっきり変な女に目をつけられたのかと思いましたよぉ」
「はは、ねえな」

すがるように抱きつく弟さんの頭を撫でて、Gくんはリビングに向かいました。

弟さんをソファーに座らせようとした時、弟さんは言いました。

「あにぃ、もう抱っこは終わりですかぁ?」
「甘えるな、お前今いくつだと思っているんだ」
「むぅ、中学生ですけど何か不満でもぉ?」
「大ありだ」

ソファーに弟さんをおろしてから、Gくんは棚におきあがりこぼしを丁寧に置きました。

「あにぃ、どうしてお人形には優しいのに僕には冷たいんですかぁ」
「別に冷たくなんてしてないだろ、それにこの人形はもらいものだから丁寧に扱うのは当然だ」
「むぅ」

機嫌を損ねたのか、弟さんはGくんから目をそらしました。

「お前はいい加減大人になれ、これからもずっと俺に甘えている気か」
「別にいいですぅ」
「ふざけんな、俺はお前にずっと甘えられるのは嫌なんだ」
「………」
「おい聞いてんのか」
「………」

ふてくされた弟さんが何も答えないのを見て、Gくんは大きなため息をつきました。

「勝手にしろ」

Gくんはリビングに弟さんを置いて、部屋に向かいました。


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