人形家族.

□:わら人形.
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これは、僕が高校1年生の時に2つ年下の妹であるキリちゃんから聞いたお話です。


『:わら人形.』


キリちゃんの友だちに、Dくんという男の子がいました。

ある日、Dくんは近所に住む人形師から試作品として不思議な人形をもらいました。

「わら人形って、納豆臭くないんだね」
「そりゃあお前、納豆を入れてないからな」

Dくんの言葉に、人形師は苦笑いしました。

わら人形は名前の通りわらで出来た人形で、手と足をピンと広げた格好をしていました。

「えーと、これに嫌いな人の爪とか髪とか入れて釘を金づちでカンカン打つんだっけ?」
「そう、ていうかお前そんな人いるのか?」
「嫌いな人はいるけど、わら人形を使うほど嫌いな人はいないな」

ゴソゴソと、Dくんはわら人形をカバンの中に入れました。

「でも貰っておくよ人形師さん、備えあれば憂いなしって言うし」
「それが使われないことを祈るよ」

お辞儀をして、Dくんは家に帰りました。

「お帰りなちゃいお兄ちゃま!!」
「ああ、ただいま」

舌ったらずでかん高い声で出迎えてくれたのは、Dくんの小さな妹さんでした。

妹さんはスタスタと足を進めるDくんに、大声で言いました。

「ねえねえお兄ちゃま、お風呂にちゅる?ご飯にちゅる?それとも」
「お風呂」
「お風呂でちゅねー」

嬉しそうに笑いながら、妹さんは浴室へと走って行きました。

妹さんは最近おままごとにはまっているのか、Dくんの奥さんのように振る舞っていました。

(まあ、すぐに飽きるんだろうな)

そう思いながら、Dくんはリビングに夕食を食べに向かいました。


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