人形家族.

□:操り人形.
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これは、僕が高校1年生の時に1つ年下の弟であるユキくんから聞いたお話です。


『:操り人形.』


ユキくんのクラスメイトに、Cくんという男の子がいました。

ある日、Cくんは近所に住む人形師から試作品として不思議な人形をもらいました。

「操り人形なんて、別にいらないんだけど」
「まあ試作品だから、無料なんだしもらっておけって」

木で出来た人形の手足には細い糸が絡みついて、少し引っ張ると簡単に操り人形が動きました。

あまり、面白いとは思えませんでした。

「もらっても処分に困るからやっぱりいらない」
「そうか、残念だ」

人形師は押しつけることなくあっさり引いて、帰っていくCくんを見送りました。

Cくんが家に帰って玄関に入ろうとしたところ、ポンと後ろから肩を叩かれました。

「お帰り、兄さん」
「あ、お帰り」

Cくんが振り向くと、そこには柔和な笑顔を浮かべた弟さんがいました。

「今帰り?時間が合ってたなら兄さんと一緒に帰りたかったなあ」
「あれ、君はブラコンだったっけ?」
「うん」

弟さんの気持ちのいい返事に、Cくんは大きなため息をつきました。

「君のこれからが、お兄ちゃんは心配だ」
「兄さんが責任取ってくれればいいんだよ」
「面倒臭いな」

肩に置かれた手をさりげなく振り払いながら、Cくんと弟さんは家の中に入りました。

「ねえ兄さん、俺兄さんが言うことだったら何でもしてあげるよ。家の仕事だって宿題だってしてあげる」
「君は馬鹿か、弟に何でも頼るなんて兄の威厳がなくなるだろう」
「威厳なんてなくても、俺は兄さんが好きだよ」
「はいはい」

適当に返事をして、Cくんは後ろをついてくる弟さんを見つめました。

「君こそ、何かあったら僕に言うんだよ。僕が出来ることだったら協力してあげる」
「ありがとう」

その時、Cくんは気づいていませんでした。

弟さんのポケットに、糸が絡みついた木の人形が入っていることに……。


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