不幸携帯.
□:ムービー.
1ページ/3ページ
.
これは、私が高校2年生の時に同級生のハナさまから聞いた話です。
『:ムービー.』
ハナさまの知り合いの知り合いに、Fさんという女の子がいました。
ある日の放課後、Fさんが教室で携帯電話を打っていると1通のメールが届きました。
「お、fからメールきてるじゃないか」
メールの送信者は、Fさんさんの同級生のfさんでした。
また何か面白いことでもしたのかな、とFさんはメールを開きました。
『今日は敬愛するFさんのために公園にいた猫さんを殺しました。Fさん楽しんで下さいね』
アイツは相変わらず私が好きだな、と笑ってFさんは添付してあったムービーを開きました。
画面には、土に埋まっている灰色の毛並みが美しい猫が映っていました。
『ニャー、ニャー』
猫は首から上が地上に出ていて、首から下は土に埋まっていました。
首だけ出した哀れな猫はただ鳴いていて、泣いているようだった。
『ニャー、ニャー』
しばらくすると、Fさんと同じ制服を着た少女が現れました。
少女の手には薄汚れた棍棒が握られていて、ズルズルと地面を引きずっていました。
『ニャッ』
不意に、猫の鳴き声が止みました。
棍棒を引きずりながら近づいてくる少女を、猫は黄色の目を見開いて見つめていました。
『………』
少女は猫のすぐ側までやって来ると、持っていた棍棒を振り上げました。
『ニャッ』
ドスッ、と猫が叫ぶ前に棍棒は振り落とされて鈍い音が響きました。
『………』
『ニャッ、ニャッ』
ドスッ、ドスッと身動きがとれない猫の頭を少女はただひたすら棍棒で殴り続けました。
猫の顔は血まみれで赤く染まっていて、まるでスイカ割りのようだとFさんは思いました。
『………』
しばらくして、あれだけ鳴いていた猫が泣くのを止めました。
それでも、少女はひたすら棍棒で猫の頭を殴り続けていました。
「はは、もう死んでいるのにまだ殴ってる」
Fさんは、棍棒で猫を殴る少女を見て声をあげて笑っていました。
その笑みは妖艶で、狂気を漂わせていました。
『………』
ピタ、としばらくして少女は猫を殴るのをやめました。
少女の足元には、赤い果実がつぶれたような原型をとどめていない猫の頭が生えていました。
『Fさん、』
ムービーの少女はニコリと笑って、言いました。
『楽しんで、いただけましたか?』
プツッ、とfさんの言葉を最後にムービーは終わりました。
クックッ、とFさんは息だけで笑いました。
「本当に、fは私を楽しませてくれるよ」
Fさんとfさんは、ただの同級生とはいえない関係でした。
スナッフムービーを好むFさんのために、スナッフムービーを作って送るfさん。
異質で異常なFさんとfさんの関係は、もう3ヶ月も続いていました。
「本当にいいな、やっぱりスナッフはfが1番いい映像を撮ってくれる」
もう1回見ようかな、とFさんが再生ボタンを押そうとしたその時です。
「ん?また来た」
Fさんの携帯電話に、また新しいメールが届いていました。
送信者は、昨日Fさんに告白してきた後輩の1人でした。
メールにムービーが添付しているのを見て、Fさんはニヤリと口元をつり上げました。
『F先輩見て!!今日はワンちゃんを鎖で引きずって殺したの!!褒めて!!』
「うわ、相変わらずバカそうなメール来た。でも彼女のスナッフも悪くないんだよね」
fには敵わないけど、と呟いてFさんはメールを開きました。
.