不幸携帯.
□:アドレス帳.
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これは、私が高校2年生の時に級友のヒトハから聞いた話です。
『:アドレス帳.』
ヒトハの知り合いの知り合いに、Cさんという女の子がいました。
ある日の放課後、Cさんが教室で携帯電話を打っていると妙なことに気がつきました。
「あれ、cさんって誰だっけ?」
Cさんがアドレス帳を見ていると、cさんという知らない人の名前がありました。
アドレス帳にはcさんの電話番号もアドレスも書いてあり、写真も添付してありました。
「学校の友だちでもバイト先の人でもないなあ、でも連絡先交換したってことは知らない人のはずないよね」
cさんはあまり親しい人ではないのだろう、とCさんは思いました。
「誰だっけかなあ」
高校、バイト先、塾。
中学校や小学校のクラスメイトまでさかのぼりましたが、思い当たる人物が見当たりません。
「名前が変わったとか整形したとかってことはないと思うんだけれど」
ピリリ、と不意にcさんの画面が消えて電話の着信画面になりました。
タイミングが良いのか悪いのか、電話の相手はcさんでした。
「cさん?」
どうしよう、と頭は迷っているのに身体は自然と動いていました。
ピッ、とCさんは通話ボタンを押しました。
「も、もしもし」
『つっ!!』
驚いたのか、電話の向こう側から息を飲む音が聞こえました。
緊張しているのは私の方なのにな、とCさんは思いました。
「あの、間違っていたらごめんなさい。あなたはcさんですか?」
『は、はい。あなたはCさんですよね』
「そうです」
『………』
「………」
沈黙が流れて、Cさんは困りました。
正直に知らないと言えばいいか、ごまかしてcさんを知っている振りをすればいいか。
『あの、』
「!!はい」
口を開いたのは、意外にもcさんでした。
『Cさんあの、大変申し訳ないのですが』
「は、はい」
『私たち、どこかでお会いしましたか?』
「………」
その言葉に、Cさんは目を丸くしました。
「え?」
『あの、私物忘れは決して悪くないのですがCさんのことが全くわからないんです』
「………」
『でも携帯にCさんのアドレスも電話番号も写真もあるということは私たちお話したことがあるんですよね?本当にごめんなさい』
「………」
『あの、Cさん?』
黙ったままのCさんに不安を覚えたのか、cさんは消え入りそうな声で言いました。
自然と、Cさんは笑いたくなりました。
「あはは、cさんも同じなんですね」
『え?』
「私もcさんのことがわからないんです、携帯のアドレス帳に確かにあなたのメアドも番号も写真もあるのにあなたのことを全然覚えていないんです」
『Cさんもですか?』
「はい」
『よかった』
ホッとしたのか、cさんの安心したため息が聞こえてきました。
写真の通りcさんは大人しくて可愛い女の子なのかもしれない、とCさんは思いました。
「でも私たちどこで会ったんですかね?cさんお住まいはどちらなんですか?私は○県の×市なんですけど」
『○県ですか?私は△県の□町に住んでいます』
「遠いですね、じゃあ学校が同じだったということはないなあ」
『そうですね、Cさんは△県にきたことはありますか?その時にお会いしたことがあるのかもしれません』
「いえ、△県に行ったことはありません。○県から遠いですし」
『そうですよね、○県は東寄りですし△県は西寄りですからね』
その後も、Cさんとcさんは何か共通点はないか探しました。
しかし、共通点は1つも見つけられません。
「cさん、親戚が○県にいたりしません?」
『いないです、それに私は○県に行ったこともありません』
「友だちは?」
『いないです、ただでさえお友だちが少ないのに県外のお友だちなんて私にはもったいないです』
「あはは」
会話をしているうちに、Cさんはだんだんcさんが気に入りました。
友だちになりたい、とCさんは思いました。
「ねえcさん、これも何かの縁ですから私ともう1度お友だちになりませんか?」
『えっ!!』
びっくりしたのか、cさんは今までで1番大きな声を出しました。
『よっ、よろしいのですかCさん?でも私はあなたのことを忘れてしまったのに』
「お互いさまです、それにcさん県外のお友だちがいないって言ったじゃないですか」
『ですが』
「Cさん」
『つっ、』
しばらく間を空けて、cさんはよろしくお願いしますと言いました。
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